2016-01-01から1年間の記事一覧

怒り

ひろさちやの『日本仏教史』には、現在の日本社会における仏教の在り方に対する著者の怒りが横溢しています。その論点は決して「葬式仏教」だけではありません。昨今の政治と社会の状況に危惧を抱く人は多くいて、仏教の世界からも様々な宗派、団体が声明を…

逃げちゃダメだ

人の世はあまりに複雑怪奇で、わけがわかならいと嘆きたくなるとき、弱気な心は“正解”を与えてほしいと願います。そして、その“正解”に求められるのは「わかりやすさ」です。その最たるものが「サイクス=ピコ協定」。著者は、それを(現在の中東の混乱を説明…

本屋

五條瑛の新作『スパイは楽園に戯れる』の発売日は6月21日。しかし、複数の本屋をはしごしても見当たらず、足を運ぶには距離がある店に電話で問い合わせても入荷していないという返事で、なかなか手に入れることが出来ずにいました。ようやく手に入れたのは7…

『日本会議の研究』

いわゆる「悪魔の証明」に顕著なように、「やったこと」は確かに存在し、「やらなかったこと」は存在しません。一部の人たちの思惑が政治に影響を及ぼしているのは、それを続けてきた努力の結果ですが、そこだけをクローズアップして特別視するのは間違いで…

利他

イギリスのEU離脱が決まってからの報道は経済の話一色です。いや、もっと直截な言い方をしましょう、金の損得の話と。この国民投票の結果をテレビのニュースで見たとき、わたしはもっと別のことを考えました。今回の結果は、こう宣言したも同義です。国の利…

生観戦

通っているボクシングジムのプロ選手が二人、試合に出場するということで、久しぶりに会場観戦しました。その二人がともに勝利したので、まずは良かったと思っています。足を運んでから知ったのですが、今回は女子選手の試合が組まれていました。わたしは、…

こつこつ読んで

ドン・ウィンズロウの『ザ・カルテル』は分厚い上下巻。読み終えるのにほぼ一か月かかりました。毎日少しずつ読み進めながら、小説と現実の二つの世界を行ったり来たりしているうちに、これは明確に、一日の用を終えてベッドに横になって本を手に取ったとき…

収奪のシステム

他人を傷つけることを自らに許した者は、自分が傷つけられることも受け入れなくてはいけません。しかし、他人を傷つけることに精神的痛痒を感じない人は、自分が傷つけられることを許しがたい屈辱と受け取ります。この一方通行の衝突が繰り返される、麻薬戦…

最上級

モハメッド・アリが亡くなりました。それを報じる記事が一般紙の一面に載るなど、スポーツ選手の枠を超えた存在だったと、あらためて感じ入っています。ボクシングの元世界ヘビー級チャンピオン。その表現に、彼の偉大さが滲んでいます。引退した名選手であ…

講演と演説

話すことも、意図を伝えるという目的がある以上、技術です。講演会などで、一人の講演者と大勢の聴衆という不均衡がありながら、巧みな話者にかかると、聴き手は「この言葉は自分に向けて発せられている」と、一対一で語りかけられているように感じます。そ…

『過ぎ去りし世界』

人は、誰もが幸せになりたいと願っています。でも、プラスがあればマイナスがあり、すべては相殺され、帳尻は合うもの。人は、自分に出来ることしか出来ません。そして、同じ人間は一人としておらず、誰もが異なる人格の持ち主です。完璧な人間などいません…

たまには

ちょっとだけ立ち止まらせてくれ。そう思うとき、黙って頷いてくれる曲です。

朝三暮四(加筆訂正)

わたしの記憶が確かなら、消費税は、その全額を福祉にあてる目的税として導入されたはずです。それは、消費税の税率を上げる話が出るたび、「福祉の財源が足りないから」という決まり文句とともに語られることからも明らかです。さて、主に高齢者を想定した…

再読

ギャビン・ライアルの『深夜プラス1』を初めて読んだのは二十年近く前。正直、面白いと思いませんでした。この名作を理解する読解力が自分にはないのかと、自分にがっかりしました。また、この作品を下敷きにした志水辰夫の『深夜ふたたび』について、「『深…

義援金

本日、地元の社会福祉協議会を通じて、微々たる金額ですが、熊本地震で被災された方たちへの義援金を送りました。とにかく使っていただきたい。

死への旅路

古代エジプトのころから、あるいは秦の始皇帝に代表されるように、権力者は不老不死を願っていました。しかし、ちょっと想像力を働かせればわかること、実現したら、それは神の罰の如きものでしょう。生きているから死ぬことが出来る。逆にいえば、死なない…

わたしの知らない世界

先日、地元のレジャーランド(といっても、小さな遊園地)に行きました。そこで、ご当地アイドルのライブパフォーマンスを見ました。まったく興味がなく、同行者の付き添いで足を運んだのですが、歌に踊りに溌剌と頑張っている、あのひたむきな姿に悪い印象…

ターン・キー契約

福島第一原子力発電所の事故に対応するのが東京電力という一私企業の社員という実態を目にしたとき、国策としての原子力政策との乖離に首を傾げました。国の、その分野のスペシャリストとも呼ぶべき人材がいないのかと。いなくて当然です。ターン・キー契約…

お見舞い

今回の熊本地震で被災された皆さんに、お見舞い申し上げます。余震と呼ぶのがためらわれるような大きな揺れが続き、そのたびに「もう勘弁してくれ」という無力感に襲われていることと思います。日常のすぐ裏側に隠れていた非日常。そこで過ごす時間は緊張の…

ツケ

わたしが働く業界では、バブル崩壊後の慢性的な不況のなか、多くの会社で人件費を抑えるために新規採用を控えていました。その結果、中堅と呼べる層がいない、あるいは手薄という状態になっています。これと同じことが、格闘技興行「RIZIN」で起きています。…

ジャーナリズムとは何ぞや

「ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、わたしは声をあげなかった。わたしは共産主義者ではなかったから。 社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、わたしは声をあげなかった。わたしは社会民主主義ではなかったから。 彼らが労働組合員たちを攻撃したと…

冷笑の先

かつて、わたしの友人は「何事であれ、その人の自己満足の問題だ」と言いました。価値観は人それぞれということです。簡単に満足するから程度が低く、満足することなく高みを目指すから偉いということはありません。しかし、それは個人の領域で完結する場合…

小説の匠

マイクル・コナリーの『証言拒否 リンカーン弁護士』を読みました。その物語の素晴らしさ、完成度の高さをあらためて説くのも野暮。読めばわかるさ。この作品のなかで、ハラーは自分がどのような人間でありたいかを自覚します。元妻と娘が誇りに思えるような…

紳士

レイモンド・チャンドラーの『プレイバック』のセリフ。「If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.」言葉やニュアンスを変えて、たくさんの人が語っていますが、アナタなら、どう訳しますか…

ウソの話

池田清彦の『この世はウソでできている』は、ある政治家が「要は金目の話でしょう」と言ったように、世に溢れる言説が利権と企業の営利活動と結びついているという身も蓋もない話が目白押しの本です。規制や法律が税金を動かし、そこに利権が生まれます。最…

保守とは

言葉の意味や使われ方が時代とともに違うのは、いまに始まったことではありません。古文の授業で思い知らされ、悩まされます。従来の意味とは違う使われ方を、国語力の低下と嘆く人もいれば、時代とともに移り変わるものと寛容に受け止める人もいます。しか…

悲鳴

日々起きる、幼い子供が犠牲になる虐待事件、老々介護の果ての(女性だけが亡くなる未遂も含めた)心中事件。その他、家族が殺し殺される事件。わたしには、それらが、この日本という国を形作る社会の悲鳴に聞こえます。

一緒に読もう

一人では出来ない読書があります。絵本の読み聞かせです。二人で一緒に……。パパはウルトラセブン (ウルトラマンえほん)作者: みやにしたつや,円谷プロダクション出版社/メーカー: 学研プラス発売日: 1999/11/02メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含む…

現代の西部劇

家族の絆を描いて、比類なし。その中心にいるのは、家族にとっても、仕事においても決して完全無欠のヒーロー“ではない”、猟区管理官のジョー・ピケット。しかし、完璧でなくても、ジョーは家族に対しても仕事に対しても、決して手を抜かず、どこまでも誠実…

教訓

今回のSMAPの解散騒動から教訓を汲み取るとしたら、それはどのようなものでしょう。一連の報道(笑ってしまいますが、NHKのニュース番組も取り上げていましたので、報道と呼びます)に共通しているのは、善玉と悪玉を配した“わかりやすい”ストーリー作りです…