2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

山で仏に会う

昨年の秋以来、久しぶりに山登りに出かけました。冬山雪山には手が出せません。それほど高い山ではなく、二、三の山が連なっていて、ちょっとした縦走気分も味わえます。そのアップダウンを繰り返しながら、ふと思いました。人生は山あり谷ありと言いますが…

へぼ将棋

船戸与一が亡くなって以来、未読の作品といっても、アンソロジーに収録されている短編か、小説以外の評論やインタビューしかないなかで、ずっと気になっていたのが『棋翁戦てんまつ記』でした。ずっと絶版状態だったのが文庫化されたのは、きっと藤井聡太の…

宮仕えは辛い

山田風太郎は、自作の採点が辛いことで知られています。どう読んでも傑作と思える作品が、本人に言わせるとB級やC級との評。“忍法帖”シリーズにおいて、そのなかでA級とされるものが、90年代前半に講談社ノベルスで刊行された作品群です。これらは一期と二期…

体重超過

ここ数年、ボクシングにおいてチャンピオンの体重超過と、それにともなう王座の剥奪が繰り返されています。そして、興行として穴をあけるわけにはいかず、挑戦者が勝てば新チャンピオンになり、そうでなければ王座は空位とされるという歪な形での試合が行わ…

『手のひらの幻獣』

三崎亜記は、デビュー作の『となり町戦争』以来、現実と似ていながらも微妙に違う、架空の国を舞台にした作品を書き続けています。隅々まで作家の精緻な想像力が行きわたった“もう一つの世界”。そこには、わたしたちの暮らす現実世界とは異なる価値観があり…

もう一つの『長いお別れ』

同じ会話を日々繰り返すのは責め苦の如き苦痛です。そのとき確かに言ったことを、翌日には「そんなことは言っていない」と否定される毎日。いま話していることも、明日になれば記憶から抜け落ちて、言っていない、聞いていないと否定されるとわかっていなが…