2009-01-01から1年間の記事一覧

こんな時には

“哀しみさえ、いつかは思い出となる”(漫画『三丁目の夕日』のキャッチコピー)こんなフレーズが脳裏をよぎる時は、“だからこそ”大藪春彦を読みたい。

私の好きな作家:打海文三

大好きな作家でありながら、これほど語るのが難しい作家もいません。その作風にはアンビバレントと呼ぶべき側面があります。「○○は喪失の悲しみを知った者の目で〜を見た」といった具合に、地の文に登場人物の心象風景を織り込むことで、まず無駄な文章を排…

長谷川穂積のボクシング

肉体を使った芸術、それがボクシング。今夜の長谷川穂積の世界タイトルマッチを観て、その感を強くしました。様々な格闘技がある中で、ボクシングは特に大きな制約のもとに成立しています。両の拳のみを使って攻撃し、防御し、相手を倒さなくてはなりません…

虎の尾を踏んだ男たち

かつて“天皇機関説”という言葉がありました。“統帥権干犯”という言葉がありました。戦国時代、戦国大名と呼ばれる多くの有力者は、天皇を戴くことで権力を握るべく京を目指しました。今、それを繰り返そうというのでしょうか。ジャーナリストの立花隆はかつ…

見たい、純粋に見たい

小沢一郎は一体何に怯えているのか? あの強面に隠された、薄皮一枚の下にあるのはどのような表情なのか、私は知りたい。彼は何を見ているのか、何を考えているのか。その拙いセルフプロデュースに本人自身が苛立っている姿を見て、傲慢だと批判するのは容易…

マイクパフォーマンス

テレビのプロレス中継を観なくなって久しい中で、現在、新日本プロレスの中邑真輔に注目しています。創業者でありながら触れることがタブー。それが現在の新日本プロレスでのアントニオ猪木の位置付けです。その猪木の名前を出したことで物議を醸し、中邑は…

硬派の中の硬派

もしわれわれが空想家のようだといわれるならば、 救いがたい理想主義者だといわれるならば、 できもしないことを考えているといわれるならば、 何千回でも答えよう そのとおりだ、と。−チェ・ゲバラゲバラはその最後まで、船戸が定義する硬派そのものでした…

レノンつながり

意味に囚われない言葉遊び。何を書くかと同時に、如何に書くか。 何を歌うかと同時に、如何に歌うか。

追悼:ジョン・レノン

今日は12月8日。「スタンド・バイ・ミー」の動画を貼り付けておきながら、「イマジン」について語る天邪鬼。You may say I'm a dreamer But i'm not the only one I hope someday you join us And the world will be one「朝のラッシュアワーの人の流れの中…

ルネ・マグリットの『大家族』

画家ルネ・マグリットに『大家族』という作品があります。この絵をはじめて観た時、どこをどう見れば大家族なんだろうと不思議に思いました。児童文学者の灰谷健次郎は自分の作品を語る際に、“一つの命”という言葉を使いました。ひろさちや、という仏教学者…

プロフェッショナル

観る者を魅了して尚且つ勝つのがプロ。経過ではなく結果がすべてであるのもプロ。内藤大助VS亀田興毅。二人のプロの闘い。内藤に、観客を魅了して尚且つ勝つ力が無かったということ。対する亀田はアウトボクシングに徹してカウンターでポイントを稼ぐ闘い方…

私の好きな作家:高村薫

硬質な文体と、精緻な描写。そこには、読者に委ねるという妥協はありません。逢坂剛は高村薫の『リヴィエラを撃て』を評して、「この作品は知的に挑戦的で、一度読んだだけで理解できたという人がいても、私はそれを信じない」と書きました。夢枕獏に『魔獣…

大晦日と格闘技

今年の大晦日、二つの格闘技団体が合同で興行を行うことが発表されました。目玉カードは魔裟斗の引退試合と、石井慧VS吉田秀彦。他にも二つの団体の対抗戦的組み合わせも予定されているようです。しかしながら、私の中ではいまいち盛り上がりがありません。…

私の好きな作家:五味康祐

井上雄彦の『バガボンド』が売れていると耳にした時、ならば五味康祐の作品が売れる素地はあると思いました。日本浪漫派の詩人、保田與重郎に師事した五味康祐の書く文章は漢文調で格調高く、その手で描かれた剣豪小説は、武士道という言葉では捉えきれない…

私の好きな作家:山田風太郎

多感な学生時代に終戦を迎えた山田風太郎の作品には、虚無に通じる諦念が漂っています。それが飄々とした人生観と結びつき、独特な世界観を作りあげています。赤塚不二夫の漫画には奇形的と言って良いほど風変わりなキャラクターが数多く登場します。これは…

私の好きな作家:隆慶一郎

「正史からは窺い知ることの出来ない歴史の裏面に存在したかもしれないifを、想像力を働かせてあれこれと夢想することは、伝奇小説の最も素晴らしい楽しみのひとつである。そして、こうした夢想が、たぐいまれな物語性と最新の歴史研究を根底に据えた知的ダ…

この曲は思い出の曲

たった今聴いたにもかかわらず、思い出の曲。今日は平成21年11月21日。

言い様の無い不愉快さ

今日、仙台地方裁判所で強姦致傷事件の裁判員裁判があり、男性の裁判員が被告に対して「むかつくんですよね」と声を荒げたことが報道されました。裁判員制度においては“事件”と呼んでも良いであろうこの出来事は、その記録において汚点として残ることでしょ…

思い出話:祖母の死

祖母は目が不自由で、私がもの心ついた時には既に、食事とトイレとお風呂以外の用で自室から出ることも無い生活を送っていました。最後の数年は完全に寝たきりになり、施設に入ることも無く、家で下の世話も含めて介護をしました。不思議なもので、身内の死…

映画『リーサル・ウェポン3』

メル・ギブソン演じる、妻を亡くして自暴自棄になっている若手刑事のリッグスと、ダニー・グローバー演じる、家族を大切にする定年間近の老刑事マータフの葛藤と絆を描くシリーズ。第一作は“現代を舞台にした西部劇”と言われればなるほど納得の傑作。そして…

川崎フロンターレの醜態

負けた時こそ、胸を張れ。顔を上げて、勝者を讃えよ。逆境にある時こそ、その人の真価が問われる。きみたちには三浦和良という、尊敬すべき先達がいるじゃないか。

遊びをせんとや生まれけむ

遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけむ、遊ぶ子供の声聞けば、我が身こそさえ動がるれ。(梁塵秘抄)曲解は読者の特権。貴方はどんな“遊び”をするために生まれてきたのでしょうか? 貴方は一生を賭けるに値する“遊び”と巡り会えたでしょうか? …

バカと言う奴がバカ

民主党議員の中に、政策についての批判を受けて「自民党に言われたくない」という台詞を口にする人がいます。“自分は今まで批判してきた自民党議員と同程度である”と自分から認めていることに何故気付かないのでしょうか?

これでは道化だよ

羽田空港ハブ化が取り沙汰された当初、森田健作知事は芝居気たっぷりに怒りを露にし、その翌日には一転して「地方を苛めないでください」と弱者の立場を強調してみせました。千葉県民は今後政治的な問題が起きた時、森田知事の発言を素直に信じることが出来…

『悲劇週間』矢作俊彦

チャンドラリアンの代表として、原籙とともに矢作俊彦がいます。詩人でありフランス文学の名翻訳者である堀口大學の青春回想記の形を取った一大ロマン。二十歳の大學は外交官である父の任地メキシコに呼ばれた。彼の地で起こった革命のただ中を颯爽と生き、…

男らしさ

かつて、寿司屋の跡取り息子を主人公にしたテレビドラマを評した、新聞の番組欄の紹介コラムの中の言葉。“粗野と男らしさは違うものだ”

UWFの記憶

旧UWFはその活動の最後の時期、テレビ中継がありました。テレビ東京の「世界のプロレス」という番組の一部がUWFに割り当てられていました。 “あの”タイガーマスクが素顔の佐山聡として戦う姿を観ることができる。雑誌で見る限り、極限まで曖昧さと無駄を排し…

チャンドラーと村上春樹

『長いお別れ』が『ロング・グッドバイ』に、『さらば愛しき女よ』が『さよなら、愛しい人』になりました。村上春樹の翻訳について、批判的な意見が多く目に付きます。 曰く、構文を理解していない誤訳だらけ。 曰く、スラングについて無知だ。 曰く、これは…

『U.W.F戦史2』

「選ばれてある者の恍惚と不安、二つ我にあり」とは、第二次UWFの旗揚げ時にリング上で挨拶をした前田日明の言葉ですが、これはファンにも当て嵌まりました。自分たちは本物を見極める目と先見性を持ち、従来のプロレスファンとは違うのだという、多分に愚か…

見苦しい独白

自らが父親になることで、許せるようになる? 許すことで、呪縛から開放される? 開放されることで、対等になれる?冗談じゃない。 「優しさが強さだと言った時、ハードボイルドは死んだ」と書いたのは、チャンドラーの作品を“エクスキューズ(言い訳)の小…