2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

鬼の木村の真実

記憶は記録に塗りつぶされ、辻褄が合わされます。これにて一件落着と。その正史に対する叛史。その拠り所となる個人の記憶もまた、美化され、脚色されます。当人に都合の良いように。最も信憑性が高かるべき“自伝”が最も信頼できないというパラドックスが生…

『レイジ』

夢に向かって一直線、最短距離でゴールに駆け込んだ物語など、誰も読みたいとは思いません。ドラマとは、その寄り道、迷い、鬱屈に他なりません。苦味があるから甘味が引き立ち、甘味があるから苦味を味わえる。それを内面の描写で綴るのではなく、読んで楽…

生贄の山羊

その研究者は罪を犯したのでしょうか、犯罪者なのでしょうか。大略「こういうことを発見したと思うので、確認をお願いします」と届け出て、それが間違っていただけのことでしょう。それが、社会的制裁を受けるほどの罪なのでしょうか。個人的にネットで公表…

愚劣

三年という月日に、何か意味があるでしょうか。暦とは、船戸与一の『砂のクロニクル』の序文を持ち出すまでもなく、人間が便宜的に作り出した基準に過ぎません。何も変わっていません。相変わらず、私は東日本大震災を枕詞に何かを語ることができません。ど…

アントニオ猪木

私たちは、どうしてアントニオ猪木に惹かれるのでしょうか。おそらく、熱心な猪木ファンではないスポーツノンフィクションライターが採った手法は、自身の主観を排し、資料やインタビューを基に物語を再構築することでした。それでも、単行本(文庫本)一冊…

二つの『マルタの鷹』

ダシール・ハメットの『マルタの鷹』を読んだのは、船戸与一がきっかけでした。ハメットから大藪春彦を経て船戸与一へという流れを逆に遡ったわけです。『血の収穫(赤い収穫)』は楽しめましたが、『マルタの鷹』は駄目でした。ただ読み終わらせただけとい…

育てる

ブロッコリーとカリフラワーの種を、まだ耕した場所ではなく、掌に収まる大きさの容器に蒔いて十一日。ちらほらと芽が出始めました。小さい。本当に小さい。人間の赤ちゃんの手を想わせる小ささです。何度も見に戻り眺めていると、自然と頬が緩み、これから…

使命感

人を動かす最大の要素は“使命感”です。それが、誰に頼まれたのでもない自らの心から生まれたものなら最強です。物質的な利益を得ることもなく、一日が終わるとへとへとになっても、その疲労すら嬉しく、深い満足感に包まれます。しかし、ここが私の弱いとこ…