2016-01-01から1年間の記事一覧

勇気の一冊

仲良きことは美しき哉。そして、その美しさは儚いものではなく、強く逞しいものでなくてはいけません。あの日、黙って頷いたこと。あれは間違いではなかったと言ってもらえたような気がします。中国嫁日記 (六)作者: 井上純一出版社/メーカー: KADOKAWA発売…

投資

裏隣りの家の女の子が大学院を卒業して中学校の教師になりました。担当科目は数学。素直に頭を垂れるのみ。忙しい毎日を過ごしているようで、本を読む余裕もないと思いますが、一冊差し入れました。プレゼントではありません、差し入れです。内田樹の『下流…

『狼の領域』

個人が個人として自由に生きることと、国民として国に属することの間に整合性は存在するのでしょうか。読み終えて、C.J.ボックスと大藪春彦の対談を読んでみたかったと書いて、わたしの感想が伝わりますか?狼の領域 (講談社文庫)作者: シー.ジェイ・ボック…

この冬も

微々たる金額ながら冬のボーナスが出ましたので、いつものように「あしなが東日本地震津波遺児基金」と「国境なき医師団日本」に寄付をしました。今回は、金額についての愚痴は止めておきます。とにかく、今日を明日に繋げてほしい。その一念だけです。あの…

『転落の街』

ある犯罪の被害者が、人生を破壊されて同じ犯罪者になる。悪と悲劇の繋がりは、その流れを遡っていけば開始地点、源にたどり着けるものなのでしょうか。敵対者は、互いに「相手が敵意を抱いて攻撃してくるから、排除することで身を守ろうとする」のでしょう…

共感

冲方丁の『マルドゥック・アノニマス』は、山田風太郎の忍法帖ものの系譜に連なる作品です。エンハンサーと呼ばれる、特殊な(異様な)能力を持つ者たちの戦いが描かれます。第一巻は、たくさんのキャラクターの紹介も含めて個別の対戦(対決ではありません…

人種差別について、「黒を悪いもの、ネガティブなものの象徴として扱っているかぎり差別はなくならない」(そうとう意訳しています)と聞いたことがあります。では、月村了衛の『黒涙』の“黒”は何を表現しているのでしょうか。警察組織は、人の集まりである…

訃報に接し

フィデル・カストロの訃報に接し、船戸与一の『国家と犯罪』を手に取りました。その(朗々と声に出して読みたくなる、詩のような)序文にて船戸が見つめている世界において、最後まで「カストロ」という個性を全うした姿に、アメリカに亡命したキューバ人た…

入門書

宇宙から地球を眺めると、山や川、海はありますが、国境線は見えないと言います。地表に立つと、その山の高さ、川や海の広さや深さを目の当たりにします。本書を読んで、地政学とは、この二つの視線の交錯を基とする学問だと理解しました。もちろん、地政学…

ジレンマ

人種や肌の色を理由にした差別は言語道断ですが、男と女は人類社会のすべてに存在するのであり、それを理由に差別することは同じレベルで許されません。アメリカ国民は、口が裂けても「ヒラリーが敗れたのは女だからだ」とは言えないでしょう。その可能性に…

祭りの後

国民の不満の受け皿になることと、その不満を解消することは違います。トランプ氏は、この溝を埋めることが出来ないでしょう。日本は、アメリカに先んじて民主党政権の体たらくという経験をしていますから、よくわかります。現状への不満を背景に、乱暴な言…

相似

本書でエマニュエル・トッドが語っている、彼の母国フランスの様子は、驚くほどに現在の日本の姿と重なります。トッドは、それを「深い夜の闇」と表現しています。問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論 (文春新書)作者: エマニュエル・トッド,堀…

世論とは

アメリカの大統領選挙がかつてない泥仕合の様相を呈しています。ネガティブキャンペーンも極まれり。互いに、順番にスキャンダルが表面化し、その都度世論調査が行われ、その災禍に見舞われた候補者の支持率が急降下し、対立候補がポイントを稼ぎます。この…

化粧を落とす

以前に書いたことの繰り返しになりますが、わたしは自分が世界の中心だと思ったことがありません、思えません。特定の主人公を置かない群像劇、グラントホテル形式の登場人物の一人としか捉えられません。世界に中心など、愛を叫ぶ場所などありません。しか…

黙って頷く

敬愛する親戚のおじさんの言葉。親に出来ることは、子供が何かを決めたとき、「そうか」と黙って頷くことだけ。頷きました。その決断に至る葛藤、自分を納得させる過程が手に取るようにわかりました。それでも、黙って頷きました。でも、神さま、仏さま。可…

目から鱗の一冊

良書という言葉を素直に捧げたい本です。冒頭に語られるのは、9.11同時テロの後のアメリカと、先の戦争の日本の共通点という話です。そこから知的好奇心を刺激されまくり。自分の知識とのつき合わせという読書の始まりです。人は一人では生きていけません。…

歴史は繰り返す

エマニュエル・トッドの著書を二冊、買いました。『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』に歯が立たなかったのに、懲りないものです。ここ数か月、立て続けに新刊が発売されている様子に、サミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』と、トマ・ピケティの『21…

もういいや

森瑤子にはたくさんの著書がありますが、そのほとんどが短編集です。目の前に文庫の赤い背表紙がずらっと並んでいますが、その中から目当ての作品を探し出す気力がないので、記憶を頼りに書いてみます。ある夫婦の話。結婚して数年が経ち、お互いに相手を異…

勝負の第12巻

I miss you. アナタがいなくて寂しい。でも、いま居る場所で頑張ることが、アナタへの誠意。自分を磨くことを怠ってアナタの前に立つことは、二人への侮辱。だから、わたしは今日も歯を食いしばる。3月のライオン 12 (ヤングアニマルコミックス)作者: 羽海野…

『暗殺者の反撃』

マーク・グリーニーの『暗殺者の反撃』は、シリーズを通しての密度の濃い冒険小説として高い水準を保ちつつ、そこに陰謀を解く謎解きの要素を加えた、一読巻を置く能わざる一気読み本です。冒険小説が好きと自認するなら、これは外せない一作です。と同時に…

ボクシング雑感

二つのボクシング世界タイトルマッチ。当初のメディアの扱いは、山中慎介が主で、長谷川穂積は従でした。しかし、試合後は逆転し、長谷川の(試合内容ではなくボクシング人生における)逆転劇がクローズアップされることとなりました。山中の、前の試合の接…

すったもんだの季節

民進党の代表に蓮舫氏が選ばれました。さあ、すったもんだの始まりです。彼女が選ばれたのは何故か? そのキャリアや政治家としての実績が評価されているからではありません。まさか、事業仕分けのパフォーマンスを挙げるひとはいないでしょう。有権者の耳目…

人生の後悔

映画『シン・ゴジラ』を観ました。「嗚呼、これは実写版『エヴァンゲリオン』だなあ」と思いつつ、一本の映画として満腹、満足な作品でした。ただ、一つだけ残念なことがあります。それは作品ではなく自分についてです。初代ゴジラからシリーズを(ビデオやD…

わくわく

「深宇宙からの「強い信号」検知 地球外文明発見の期待高まる」http://www.afpbb.com/articles/-/3099026このニュースを知って、わくわくせずにいられようか。

戦っている

我々は戦いの最中にあります。反骨とは、いたずらに反権力を気取ることではありません。この作家も戦っています。玉磨き (幻冬舎文庫)作者: 三崎亜記出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2016/06/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る

くだらない

禍福は糾える縄の如し。夢枕獏は、『魔獣狩り』がヒットしたことでエロスとバイオレンスの作家と見做され、その呪縛から逃れるために悪戦苦闘したことを自著で綴っています。“機龍警察”シリーズで小説家として世に出た月村了衛も同じ危惧を抱いたのか、作風…

ペーパーバック

作家買い。五條瑛の作品は、その内容を確認するまでもなく手に取ります。それが『プラチナ・ビーズ』に始まる“鉱物”シリーズの最新刊とあってはなおさらです。ですので、その『スパイは楽園に戯れる』を予備知識がまったくない状態で読み始めたのですが、こ…

『漁師の愛人』

あの地震に材を取った小説を読むとき、ささやかであれ覚悟を秘めた緊張を伴います。森絵都の『漁師の愛人』に収録されたページ数も少なめの中編を一つ読むのにも、一息に読み通すことが出来ず、途中で休憩を挟んで爪切りなどをして心を落ち着けなくてはなり…

いぶし銀

誰もがきらびやかなコスチュームを身にまとい、それが個性とされるキャラクターを演じている現在のプロレス界で、いぶし銀と評されるプロレスラーがいるでしょうか。昭和のプロレスには、新日本プロレスなら木戸修や藤原喜明、全日本プロレスならマイティ井…

恒例の

少し遅くなりましたが、半年に一度の恒例、「あしなが東日本地震津波遺児基金」と「国境なき医師団日本」に寄付をしました。いつもどおり、微々たる金額です。いまでも、亡くなったことが判明した方々の名前が隅から隅までびっしりと書かれた新聞の紙面をふ…