格闘技

弟よ

難しいことを難しくやるのは素人で、難しいことを簡単(そう)にやってみせるのが本物だと言います。山本美憂のタックルの話です。タックルを見て見事だ、あるいは美しい動きだと感じたのは宮田和幸のそれ以来です。今回の試合は、内容よりも結果。それはフ…

見識

1988年8月8日、横浜文化体育館で行われた、IWGPヘビー級選手権試合。チャンピオンの藤波辰巳VS挑戦者のアントニオ猪木。いまなお熱く語られる名勝負です。結果は60分フルタイムを戦い抜いてのドロー。ミスター高橋は、著書の『流血の魔術 最強の演技』で、こ…

体重超過

ここ数年、ボクシングにおいてチャンピオンの体重超過と、それにともなう王座の剥奪が繰り返されています。そして、興行として穴をあけるわけにはいかず、挑戦者が勝てば新チャンピオンになり、そうでなければ王座は空位とされるという歪な形での試合が行わ…

ボクシング雑感

亀田興毅が現役復帰を口にしました。それを聞いて最初に考えたのは、「数年間のブランクがあって再び戦えるほどボクシングは甘いモノではないだろう」ということです。直近で思い出すのは、ボクシングではありませんが、船木誠勝です。復帰後、思うような結…

猪木イズム考

高田延彦とヒクソン・グレイシーが戦ったPRIDE.1から20年ということで、関連書籍の発売が続いています。何とまあ、賑やかなこと。そのなかの一冊に『プロレスが死んだ日』というものがあります。当然ながら、「プロレスは死んでいない」という反論が出ていま…

東京小旅行①

久しぶりに東京に出かけました。観光ではなく明確な目的があってのことで、ビジネスホテルの予約からすべて自分で準備をしました。初日の目的地は後楽園ホールです。通っているボクシングジムのプロ選手が東日本新人王決勝戦に出場するので、その応援です。…

コール

プロレスラーの高山善廣が試合中のアクシデントにより、首から下が麻痺して動かない状態になり、医者からも治る見込みはないと告げられたそうです。夢枕獏はUWFを運動体と表現しました。それは選手だけではなく、応援する観客をも巻き込んだものでした。自分…

応援します

わたしはボクシングを習っていますが、プロを目指してのことではありません。通っているジムには、プロ選手もいれば、ライセンス取得を目指している人もいますが、そうではない人も大勢います。もしも、ボクシングジムに通うことが許されるのはプロを目指す…

ボクシング雑感

二つのボクシング世界タイトルマッチ。当初のメディアの扱いは、山中慎介が主で、長谷川穂積は従でした。しかし、試合後は逆転し、長谷川の(試合内容ではなくボクシング人生における)逆転劇がクローズアップされることとなりました。山中の、前の試合の接…

いぶし銀

誰もがきらびやかなコスチュームを身にまとい、それが個性とされるキャラクターを演じている現在のプロレス界で、いぶし銀と評されるプロレスラーがいるでしょうか。昭和のプロレスには、新日本プロレスなら木戸修や藤原喜明、全日本プロレスならマイティ井…

生観戦

通っているボクシングジムのプロ選手が二人、試合に出場するということで、久しぶりに会場観戦しました。その二人がともに勝利したので、まずは良かったと思っています。足を運んでから知ったのですが、今回は女子選手の試合が組まれていました。わたしは、…

ツケ

わたしが働く業界では、バブル崩壊後の慢性的な不況のなか、多くの会社で人件費を抑えるために新規採用を控えていました。その結果、中堅と呼べる層がいない、あるいは手薄という状態になっています。これと同じことが、格闘技興行「RIZIN」で起きています。…

それは感傷だ

かつてのPRIDEのスタッフが再集結して年末に格闘技イベントを開催するというニュースが流れました。あの熱気よ、もう一度。その気持ちはわかりますが……。失くしたものが再び戻ってくることはありません。もし戻ってきたとしても、それはもう、かつてアナタの…

技術のレベル

なぜ、ボクシングの変化について書いたかというと、通っているボクシングジムの練習生だった人が、地下格闘技の大会に出場するという話を聞いたからです。総合格闘技の練習もしておらず、一か月近く運動もしていないそうで、それで試合をするのは無謀と思え…

ボクシング今昔

ボクシングは、殴り合いであると同時に理(ことわり)の競技です。その技術の進歩により、街の喧嘩自慢が飛び込んでもおいそれとは通用しない世界になってしまったそうです。幼いころから学び始め、少なくとも高校生の段階でアマチュアの実績を積んでいない…

UWF

プロレスラーの垣原賢人が病気療養中で、その応援のための大会が行われたとのこと。UWF。この三文字に魅せられたのは、プロレスラーもファンも同じ。この感動の共有は、他のプロレス団体ではあり得ません。「プロレスラーは強いんです」by桜庭和志病魔との、…

市民権、遠し

佐山聡が心臓の手術を受けたとのこと。予後も順調で、まずは一安心といったところでしょうか。それにしても、今回の出来事の一連の報道を見聞きして、プロレスはおろか格闘技も、かつてアントニオ猪木が唱えた“市民権”をいまだに手に入れてはいないのだと思…

誇り

ひさしぶりに試合会場に足を運んでボクシングを観戦しました。リングに立つ二人。規定ラウンド後、彼らは勝者と敗者になります。必ず。どっちも頑張れ。どの試合を観ても、そう思わずにはいられませんでした。勝者を称える一方で、敗者を嗤う者は誰一人いま…

あの夜のこと

もう何年も前、友人と居酒屋で飲んでいたときのこと。あるスポーツバーで女子プロレスラーだったジャガー横田をゲストに招いてのトークイベントがあり、出かけたところ、自分も含めて、これといった質問をする者がいなくて盛り上がりに欠けたという話が友人…

散る

夢枕獏は、アントニオ猪木に言いました。大略「プロレスラーとしての最期のとき、アントニオ猪木には凄絶に敗れ、散ってほしい」と。また、大略「アントニオ猪木の実質的な引退試合はシータ・チョチョシビリとの一戦であり、その後の試合はオマケのようなも…

神か人か

プロボクシングの話。山中慎介の左ストレートを“神の左”と呼ぶことに抵抗を感じます。「神は細部に宿る」なら、修練の積み重ねの結果としてのフィニッシュブローに神性が宿ることもあるかもしれません。それでも、私は、それを“人の拳”と捉えたい。“山中慎介…

洗練

ボクシングにおいて、どうして(相手に大きなダメージを与えるものではない)左ジャブが大切なのかを未経験者に理解してもらうのは困難です。久し振りに試合を観戦して、日本ランキングの上位に名を連ねる選手、そして、日本チャンピオンの動きを美しいと感…

戦う男の浪漫

通っているボクシングジムの選手の試合があり、久し振りに観戦しました。今日がデビュー戦という選手同士の組み合わせから、日本ランカーのセミファイナル、日本チャンピオンのメインイベントまで、全七試合。それぞれに技術の巧拙はあります。しかし、それ…

現状認知

先日、通っているボクシングジムでのこと。ある練習生に「田村潔司に似ているね」と言ったところ、「それ、誰ですか。ボクサーですか?」と返されました。時間の流れを実感するとともに、現在、格闘技がマイナーな存在であることを痛感しました。

プロレスほど素敵な商売はないか

分裂劇はプロレスに欠かせない風景。そして、「理想のプロレス」を目指し、異なるものを排除した結果、団体の数は増え、各団体のリングでは、純粋培養された(戦いではなく)約束ごとを遵守したムーヴが繰り広げられることになりました。業界の最大手とされ…

エクスキューズ

不甲斐ない試合が続く亀田興毅。ついに、試合後に土下座までするようになりました。彼は、何を詫びているのでしょうか。口が裂けても、自分が作られた世界王者であり、それに相応しい実力が伴っていないことの葛藤を吐露することはできません。その立場で、…

プロレスって素晴らしい

リンクしていただいているブログ、H.Tさんの「日刊H.T」にて、とても素敵な動画が紹介されています。“琴線に触れる”こういう物語を生み出す土壌、底力がプロレスにはあります。

波紋を消すな

IGFの大晦日興行での藤田和之VS小川直也について談論風発の様子を見て、まず思ったのが「大したものだ」でした。プロレスを含む格闘技において、近年、これほどまでに誰もが口角泡を飛ばして語ることがあったでしょうか?昭和のプロレスを見てきた者には「こ…

ネガティブから始めよう

山田風太郎はシニカルなユーモア感覚の持ち主です。相変わらず記憶をもとに書いていますので正確ではありませんが、大略以下のように書いていたことを覚えています。「世の60歳以上の老人が(全員)突然いなくなっても誰も困らず、社会は何事もなく動いてい…

出戻り

桜庭和志と柴田勝頼が新日本プロレスのリングに上がることに否定的な意見もあるようですが、これは逆に千載一遇のチャンスです。誰にとって? 迎え撃つ新日本プロレスの選手にとって。出戻りといって私が思い出すのは、長州力です。追随するレスラーが多く、…