ボクシング雑感

亀田興毅が現役復帰を口にしました。それを聞いて最初に考えたのは、「数年間のブランクがあって再び戦えるほどボクシングは甘いモノではないだろう」ということです。

直近で思い出すのは、ボクシングではありませんが、船木誠勝です。復帰後、思うような結果が出ませんでしたし、それ以上に、戦いぶりに現役の選手に追いつけていないという印象を持ったことを覚えています。

あるいは海の向こうのUFCでも、様々な理由から戦線を離脱していた選手が復帰するケースが多々ありますが、決して良い結果は出ていません。なかには、劇的な勝利を収めたにもかかわらず、禁止薬物の使用が発覚して無効になったり。

亀田興毅は、復帰の理由として「やり残したことがある」旨の発言をしていますが、それは何かをやり抜こうとして、何らかの事情で断念せざるを得なかった人のセリフです。

わたしには、彼が何をやり抜こうとして戦っていたのか想像出来ません。戦うことによる自己実現ではなく、三階級制覇という“結果”を目指していたのではなかったでしょうか。

やり残したことがあるという言葉も陳腐です。端的に収入が減って懐事情が大変なのだろうというのが、わたしの見方です。

それでも、こうしてブログに記事をしたためてしまうくらい、亀田興毅の名前には影響力があります。返す返すも、彼に本当の実力が備わっていたらと残念です。

さて、こうして後ろ向きなことばかり書いていても何も始まりません。毀誉褒貶はあっても、いわゆる世間への訴求力があること自体は凄いことです。

これがどのように作られていったのかを思い出してみるのも無駄ではないはずです。それは知られるとおり、広告代理店とテレビ局の仕掛けでした。テレビの前の視聴者が画面に見たのは、わかりやすい物語でした。

おそらく、もっと詳しい話を知りたいと専門誌を購入して追いかけた人は、いないとは言いませんが、少なかったと思います。つまり、専門的な知識やボクシングの競技の機微などは必要とされなかったのです。

これ、何かに似ていませんか? そう、PRIDEの「煽りV」です。

PRIDEがなくなった後も、現在に至るまで、主にMMAの団体や大会は販促物として継続して活用しています。

ボクシングでも、やりませんか?

以前、当ブログにても、ユーリvs渡久地の試合を取り上げて、戦う二人の物語をアピールする重要性について書いたことがあります。

http://d.hatena.ne.jp/ocelot2009/20120212/1329006544

昨年の秋、後楽園ホールに東日本新人王トーナメントの決勝戦を観にいきました。

http://d.hatena.ne.jp/ocelot2009/20171105/1509886310

この興奮は、第一にトーナメントという物語のクライマックスだからであり、第二に応援する人たちが選手と友人であったり、普段ジムで一緒に汗を流して、その努力を知っていて感情移入しているからこそです。逆に、知らないジムの知らない選手を同じテンションで応援することはないわけです。

その関心を、煽りVを使って喚起するのはどうでしょう? もちろん、程度の差はありますが。

テレビ中継があるなら、ニュース番組のスポーツコーナーで流してほしい。ただ、こんな試合を放送しますよという告知レベルの内容では駄目です。

また、これだけネットが普及した世の中です。ブログやツイッターフェイスブックで多くの人たちがボクシングについて語り、会話をしています。

これらは、フォローする(される)という形で無数の人たちが繋がっています。そして、例えば映画が好きで、その話をしたくてフォローしてみたらボクシングについても目にするということも往々にしてあるのです。

YouTubeにはたくさんの煽りVがありますが、それらは当然のことながら過去のものです。これからのものを作り、公開できるのはボクシング協会だけです。

これを作ってほしい。もちろん、費用と手間暇の問題がありますから、従来のような凝ったものは無理でしょう。しかし、もっと簡素で時間も短いものなら、何とかなりませんか? すべての公式試合のものを作るというのは現実的ではありませんから、ある一定レベル以上、例えば日本ランキング上位の選手の試合からと縛りを設けて。

これをボクシングが好きな人たちがブログやツイッターフェイスブックで紹介したら、その(もともとボクシングに興味がない人たちも含めての)拡散は想像以上のはずです。ましてや、その行為は無料(ただ)。ハードルは極めて低いです。

何も、それを見て会場に足を運んでもらえなければ意味がないなどと考えることはありません。まずは興味を持ってもらうこと。テレビ中継があれば気にしてもらうこと。

棚橋弘至は、形は違えどやったのです。そのプロモーションの効果が三年後に現れると信じて。

生で観るボクシングは、本当に素晴らしいのです。