2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『原発労働記』

世界が、その人の認識の結果でしかないなら、知らないことは即ち存在しないことです。しかし、知らないことを知ってしまった以上、知らないままで済ませるわけにはいきません。そこで手に取ったのが堀江邦夫の『原発労働記』です。すべてのページに、引用し…

『大地の牙』

船戸与一は、“現代史と同伴する”ことを作家としての姿勢にしています。“満州国演義”シリーズは、過去を描いていながら、まさしく“現代史と同伴”しています。第一の理由は、時間と場所の二点で現代の日本と密接に繋がっているから。第二の理由は、日本人は相…

波から落ちても

たまには時事ネタ。堀江貴文氏(あえて敬称付き)の収監について。石田衣良の『波のうえの魔術師』は、投資家の老人とフリーターの若者が銀行に罠をしかけるコンゲーム小説です。ミッションが成功した後、老人は姿を消し、若者は逮捕されます。そして、出所…

眠い目を擦らない

作家として、これを遺したい。船戸与一の“満州国演義”シリーズには、作家の覚悟が滲んでいます。それに応えるべく、眠くなったら素直に本を閉じています。満州国演義 (6) 大地の牙作者: 船戸与一出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/04/01メディア: 単行本…

この戦争

毎年、三万人以上の人が自殺する現代を、作家の五木寛之は“心の内戦の時代”と表現しました。地震後の不手際も含めた震災被害によって、その人生を破壊された人たちの苦渋に満ちた痛ましい決断を見聞きします。私たちは戦争の真っ只中にいるのだと、あらため…

小指の骨

森瑤子の作品に、母親が死んだら、その左手の小指の骨の欠片をもらい、それを封じたペンダントを身に付ける。そんな約束をした母と息子の話があります。あの地震から三か月。

狂想曲でもない

AKB48の“総選挙”という名の人気投票。いい大人が遊びと割り切って騒ぐだけなら、それも一つのイベントでしょう。しかし、それがニュースとして価値を持つかといったら、それは“否”です。断じて“否”です。売る側の多くの企業の連携プレーの結果として、消費者…

『音もなく少女は』

ボストン・テランの『音もなく少女は』は、生まれつき耳が不自由な少女、イヴの物語。ろくでなしの父親と、夫の暴力に怯えるだけの母親。その彼女を救い上げた、凄惨な過去を持ち、心と体の両方に深い傷を持つ女性、フラン。イヴの母親のクラリッサとフラン…

一生懸命頑張ります

長島☆自演乙☆雄一郎がプロレスのリングに上がり、活躍しているそうです。他にも名前が上がっている選手、格闘家がいます。それ相応の事情があることはわかります。それでも、「それは、ちょっと違うだろう」というのが、私の偽らざる本心です。かつて、私が…

言葉は刃(やいば)

「世の中に不満があるなら自分を変えろ 。それが嫌なら、耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らせ」by草薙素子私が書いているのは、単なる思考の排泄に過ぎないのではないか。その自戒を込めて。

戦いの最中

隆慶一郎の『死ぬことと見つけたり』は、『葉隠』をモチーフにした小説です。主人公たちは、毎朝、布団を出る前に、自分が死ぬ場面を克明に思い描きます。その一日を、死人(しびと)として生きるために。死人=既に死んでいる者に恐怖はありません。躊躇い…

温もりと喪失感

漫画『ドラえもん』に、「のび太の結婚前夜」という回があります。結婚式を翌日に控えた夜。しずちゃんに「私がいなくなって寂しくない?」と訊かれ、彼女の父親は「寂しくないと言ったら嘘になるが、思い出が温めてくれる」と答えます。しかし、その思い出…

鮫になれ

山本太郎よ。蛮勇は勇気にあらず。『新宿鮫』の鮫島の如く、内懐に爆弾を忍ばせて立ち向かえ。状況の一齣になることなく、強かに生き延びろ。新宿鮫 (光文社文庫)作者: 大沢在昌出版社/メーカー: 光文社発売日: 1997/08メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 1…