この戦争

毎年、三万人以上の人が自殺する現代を、作家の五木寛之は“心の内戦の時代”と表現しました。

地震後の不手際も含めた震災被害によって、その人生を破壊された人たちの苦渋に満ちた痛ましい決断を見聞きします。

私たちは戦争の真っ只中にいるのだと、あらためて思い知らされます。

戦後に生まれ育った私たちは、戦中というと、抑圧された暗い社会を思い浮かべます。しかし、モノの本を読むと、決してそればかりではなく、乾いた明るさもあったそうです。

テレビではバラエティ番組が放送され、ネットでは個人的な一喜一憂が溢れ返る現在もまた、紛れもない“銃後”なのです。

作家の色川武大阿佐田哲也)は、そのエッセイの中で、「何故、人は戦うのか」と問い、自ら答えます。「それは、勝つ可能性があるからだ」と。

なら、戦う価値はあるでしょう。自らの手で他人を傷つけることのない、この戦争を。