漫画『ドラえもん』に、「のび太の結婚前夜」という回があります。
結婚式を翌日に控えた夜。しずちゃんに「私がいなくなって寂しくない?」と訊かれ、彼女の父親は「寂しくないと言ったら嘘になるが、思い出が温めてくれる」と答えます。
しかし、その思い出の温もりが優しければ優しいほど、温かければ温かいほど、喪失感もまた強くなります。
それを口に出さないのは、娘を想う、父親としての矜持です。
家族と、思い出の中でしか会えない。温もりを求める時、痛切な喪失感も同時に引き受けなければいけない。
その人たちを前に、何をしているのか。