東京小旅行①

久しぶりに東京に出かけました。観光ではなく明確な目的があってのことで、ビジネスホテルの予約からすべて自分で準備をしました。

初日の目的地は後楽園ホールです。通っているボクシングジムのプロ選手が東日本新人王決勝戦に出場するので、その応援です。

これまでも、ジムの選手が後楽園ホールで試合をすることはありましたが、すべて平日のことで、なかなか仕事を休んで応援に出向くこともできずにいました。

また、大学の四年間を東京で過ごしましたが、両国国技館や隣の東京ドームには足を運んだことはあったものの、後楽園ホールは意識したこともなく、今回初めて訪れました。

時間に余裕を持ったスケジュールで動いていたので、まだ開場しておらず、そこで一階から五階まで、壁の落書きで有名な階段を上ってみました。

黒い壁に白いペンでの落書き書きなぐり。物理的に空間が歪んでいるのではないかと錯覚するくらい異様な迫力。そこからすでに後楽園ホールの一部。まさしく格闘技ファンが“集う”に相応しい異形の館です。

階段をを上って東京ドームまで行き、日陰で持って行った文庫を開いて休憩を兼ねた時間調整をして、再び戻ります。そして、トイレを済ませてエレベーターに乗ろうとしたら、何と偶然、ジムの選手と会長とトレーナーさんが到着したところで、ばったり。余計なことは言わず、応援に来たことと、頑張ってくださいというひと言だけ伝えました。

列に並んで開場を待ち、いよいよ中へ。野球場と同じく、階段を上って短い通路を抜けると、そこには見たことのある後楽園ホールの風景が。すり鉢状ですが、例えば両国国技館のように全体的に均等なデザインではないんですね。南側上段の自由席に座って眺めると、北側に木のベンチの席が階段状に壁際まで続き、東側と西側は木のベンチが数段とパイプ椅子。隣の席の方に訊いたところ、リングサイド席という扱いとのこと。

後楽園ホールだあ」と少々興奮しながら場内を眺めていると、「そうだ、(正確には違いますが)あのリングの上で前田日明新生UWFの旗揚げの挨拶をしたんだ」と思い出し、しばし感慨に耽りました。

さて、肝心の試合ですが、さすがは全選手トーナメントを勝ち上がった猛者。さらに優勝がかかった大一番ということで、すべての試合が盛り上がりました。

場内に満ちる応援の声、声、声。どの選手にも負けてほしくないというのはセンチメンタルに過ぎるでしょうか。

必ず結果は出ます。勝ちか負けか。しかし、一度の勝ちが、あるいは負けが何だというのでしょうか。あの必死で戦う姿、その向こうに見える努力。リング上にあったのは人の生命の燃焼です。

カール・ゴッチの、選手はその時その瞬間に最善の動きをすることだけに専心すればいい。その結果としての勝ち負けは神のものだ、という言葉を思い出しながら、勝者と敗者の両方に等分の拍手を送りました。

わたしが応援していた選手は負けてしまいましたが、立派な戦いぶりでした。どこまでも自分らしく、己を貫いていました。

試合の後は天下一品へ。ラーメンに餃子、空揚げも奮発してビールです。これはあらかじめ計画していました。ツイッターにてチャベスのボディ・ブローさんに教えていただいた、後楽園ホールでボクシングを観戦する際の黄金ルート。

飲んだ生ビールは、それでもやっぱり苦かった。