体重超過
ここ数年、ボクシングにおいてチャンピオンの体重超過と、それにともなう王座の剥奪が繰り返されています。そして、興行として穴をあけるわけにはいかず、挑戦者が勝てば新チャンピオンになり、そうでなければ王座は空位とされるという歪な形での試合が行われます。
比嘉大吾の体重超過は、直近の、山中慎介と対戦したネリと絡めて語られています。ネリが舌鋒鋭く批判されたのなら、比嘉も同様に責められるべきだと。
また、比嘉だけでなく、具志堅用高をはじめとする陣営の責任についての言及も見られます。
そこで、考えます。
もしも、ネリが山中との対戦に際して、対戦相手の山中やファン、関係者に真摯に謝罪して謙虚な態度をとっていたら。試合は試合として勝つために必死に戦ったとしても、勝利を手にしてもなお喜ばず、はしゃぐこともなく神妙にしていたら。
彼に対する批判のトーンは違ったものになっていたはずです。つまり、今回の比嘉の場合のように。
わたしたちは、何に怒っているのでしょう。
ボクシングは体重による階級の設定が厳密です。それは、体重の差が技術では補えないくらい重要な要素だからです。
その中で、少しでも有利な立ち位置を確保したいと上限ぎりぎりを狙うのも作戦ではあります。最初から複数階級の制覇を目論み、その過程として適正体重よりも軽い階級で戦うこともあるでしょう。
しかし、それが最優先事項になっては、ファンとして勝手なことを言わせてもらいます。
ロマンに欠ける、と。
かつては当日に行っていた計量を前日に行うようにしたのは、まず何よりもリング禍を防ぐためだったはずです。
細かい階級設定の中で、精密機械の如く体重を管理し、上手く行けばいいけれど、失敗したら実質的に違う階級の選手が戦うことになるのでは、いつまた事故が起きないとも限りません。
上記のロマンに云々は戯言として、業界全体として熟慮を重ね、指針を出してほしいと思います。あしたのために。