弟よ

難しいことを難しくやるのは素人で、難しいことを簡単(そう)にやってみせるのが本物だと言います。

山本美憂のタックルの話です。タックルを見て見事だ、あるいは美しい動きだと感じたのは宮田和幸のそれ以来です。

今回の試合は、内容よりも結果。それはファンも望んでいたことであり、見事と褒められるものだと思います。

最後の腕ひしぎ逆十字固めは意味深でした。この技は、放送席に座る高田延彦が現役時代に得意としていたと同時に、ヒクソン・グレイシーに敗れた際に決められたものです。

そのヒクソン・グレイシー高田延彦との試合において、絶えずセコンドとコンタクトを取り、ラウンド終了までの残り時間を確認したうえで、つまり、かわされても直後にゴングが鳴って仕切り治せるタイミングを見計らって技を仕掛けたのです。

山本美憂は、それが出来ませんでした。ほぼ、試合終了と同時。正確には、その動作の途中でゴングが鳴ってしまいました。

放送席に陣取った人たちは、口々に山本美憂の成長を褒めそやしていましたが、そういうフィジカルなことではなく、まだそこまで計算出来ないくらいに未熟だからこその必死さに、わたしは胸打たれました。

弟よ。

姉として立派な振る舞いであり、試合でした。

追伸:この試合終了間際のタイミングでの腕ひしぎ逆十字固めについて、自身が敗れた試合とはいえ、高田延彦が触れてくれたら彼とRIZINの評価が上がったと思わずにいられません。PRIDEからの歴史として。