くだらない

禍福は糾える縄の如し。夢枕獏は、『魔獣狩り』がヒットしたことでエロスとバイオレンスの作家と見做され、その呪縛から逃れるために悪戦苦闘したことを自著で綴っています。

“機龍警察”シリーズで小説家として世に出た月村了衛も同じ危惧を抱いたのか、作風を一つに絞ることなく様々な作品を上梓し続けています。

その一つ、テレビドラマ『水戸黄門』を下敷きにした、あるいはパロディにした『水戸黄門 天下の副編集長』は、各種ネーミングからキャラクターの設定、エピソードの由来まで、とにかく愉快で楽しい一作です。

最近、くだらないことや失敗談こそ、後々に楽しく思い出せるもので、それがない人生は貧しいのではないかと思っています。

読者を楽しませようという小説家の意欲、そして何よりも作家自身が楽しんで書いている様子が行間から溢れている、くだらなくて面白い一気読み本です。