人種差別について、「黒を悪いもの、ネガティブなものの象徴として扱っているかぎり差別はなくならない」(そうとう意訳しています)と聞いたことがあります。

では、月村了衛の『黒涙』の“黒”は何を表現しているのでしょうか。

警察組織は、人の集まりである以上、多くの問題を抱えているのは当然ですが、童謡「犬のおまわりさん」で歌われるように、社会の安全を守る“正義”と位置付けられます。

一方で、かつての学生運動、現在の沖縄の問題に顕著なように、その在り方から「体制の犬(番犬)」と軽蔑的な言葉を投げつけられることもあります。

その組織に属する“黒色分子”。

その目的は、腐敗した警察官や、警察組織と癒着した暴力団、中国人犯罪組織に打撃を与えること。

白があるから黒があるのか、黒があるから白があるのか。

白も黒もない、すべてが溶け合って灰色の世界で、この作品のスタンスは、前者です。

言い訳と自己正当化、欺瞞に満ちた自らを正義と称する者が白を振りかざすなら、それに反発する者は必然的に黒を自覚することになります。

白も黒も、ともに美しい。

それに気づかない傲慢が、黒い涙を流させるのだと思います。

黒涙

黒涙