化粧を落とす
以前に書いたことの繰り返しになりますが、わたしは自分が世界の中心だと思ったことがありません、思えません。特定の主人公を置かない群像劇、グラントホテル形式の登場人物の一人としか捉えられません。
世界に中心など、愛を叫ぶ場所などありません。
しかし、世の中には自分が可愛くて仕方のない人で溢れかえっています。自分は主人公として、あるいは少し謙虚に重要人物として扱われて当然と思っている人の多いこと。
そういう人たちが衝突するのは当然です。
そして、出来事は自己正当化のために客観性を失い、嘘はついていないかもしれませんが、事実は解釈の数だけあるということになります。
その虚飾を剥いで、出来事の連鎖としての事実をあぶり出すのは知的好奇心を刺激します。教科書にも載っているエピソードの数々、語られている“事実”がひっくり返って新しい顔を見せるのは本当に面白い。
読み終えて、もっともっとたくさんの話を聞かせてほしいと思わずにいられません。
それにしても、誰もが自国を中心に置いた世界地図を見ていたなかで、スターリンが世界地図ではなく地球儀を見ていたというエピソードには考えさせられました。
どこにも中心がない地球儀を見て物事を決めていた人が人類史上類を見ない独裁者となり、つまり自分を中心として世界を規定し、数多くの悲劇を作ったという事実には救いがありません。
- 作者: 半藤一利,出口治明
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2016/08/01
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