『U.W.F戦史2』
「選ばれてある者の恍惚と不安、二つ我にあり」とは、第二次UWFの旗揚げ時にリング上で挨拶をした前田日明の言葉ですが、これはファンにも当て嵌まりました。自分たちは本物を見極める目と先見性を持ち、従来のプロレスファンとは違うのだという、多分に愚かな選民思想は心地好いものでした。
フジテレビの夕方のニュース番組でUWFが取り上げられた時の誇らしい気持ちは今でも良く覚えています。
ブームは一過性だからこそブームです。“新しいもの”という価値観に支えられたそれは、“別の新しいもの”が現れれば、その地位を追われる運命にあります。UWFは内部分裂という挫折によってその運命を免れ、華やかな姿をファンの記憶に残したまま消え去りました。
分裂したことで、似た志向を持つ者が派閥を作り、それぞれに新しい団体を作りました。その結果、UWFが本来持っていたはずのダイナミズムが失われ、縮小再生産の如き様相を呈しました。一方で、その思想は少人数のグループになったことにでより深化し、総合格闘技へと繋がりました。
職場の先輩に聞かされたことがあります。
「組織は、所属する全員が全員優秀であっては成り立たない。一部の優秀な者たちと、平均的な者たちと、使い物にならない者たち。このピラミッド構造があってこそ仕事は回る」
プロレスラーは技術屋であり、一人一人が個人営業の一国一城の主です。年老いて若者に道を譲るということもないベテランレスラーが多くリング上にいる光景が当たり前の中で、血気盛んな若者たちが集まったUWFは、離合集散が世の常とはいえ、旗揚げした時点で、既に崩壊の芽を内部に抱えていたのかもしれません。
好事魔多し。『U.W.F戦史2』を読んで、華やかに大成功を収めているように見えながら、これほどの矛盾を抱えた綱渡りをしていたと初めて知りました。
先日行われた船木誠勝と鈴木みのるの試合が反則によって終わったことにブーイングをした観客が少なからずいたそうです。目の前の(他人に提供された)ものをただ“消費”するのではなく、もっと大きな視点から“消化”して自らの血肉にして欲しいと願わずにいられません。二人はこんな大きな物語の主要登場人物なのですから。
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U.W.F.戦史〈2〉1987年~1989年新生U.W.F.復活編
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