大晦日と格闘技

今年の大晦日、二つの格闘技団体が合同で興行を行うことが発表されました。目玉カードは魔裟斗引退試合と、石井慧VS吉田秀彦。他にも二つの団体の対抗戦的組み合わせも予定されているようです。しかしながら、私の中ではいまいち盛り上がりがありません。おそらく当日にテレビの前に座ることはなく、録画して、正月に余計な部分をとばしながら観ることになると思います。

曙VSボブ・サップの夢よ、もう一度。主催者のそんなガツガツした思惑が透けて見える、大晦日の格闘技中継。それを何年も繰り返して、まだ幻想に捕らわれているのは無残です。

確かに曙VSサップの視聴者に対する訴求力は凄まじいものがありました。あの時の正月休み明けの職場で、普段は格闘技に興味の無い人達がその話題で盛り上がっていたことを覚えています。

ですが、それはあくまでも元横綱の曙と、CMにも出てお茶の間にもそのキャラクターが浸透したサップという、格闘技とは関係の無い、個人のネームバリューに依存したものに過ぎませんでした。この後すぐこの後すぐと最後まで引っ張られた視聴者のうちのどれだけの人が格闘技に興味を持ってくれ、その後の格闘技界に寄与してくれたか、疑問です。去る者は日々に疎し。石井慧も格闘技ファン以外の人達にどれだけ興味を持たれるか。アメリカのUFCがPPVの視聴者数を意識しているように、格闘技イベントが視聴率を気にするのは当然ですが、はっきり言って色物対決だった曙VSサップの代替カードを探しているのは本末転倒です。

また、打倒紅白打倒紅白と言っている時点で、既に負けています。NHK民法の格闘技イベントに視聴率を取られないように頑張りたいなどと言い出してこそ、そこで初めて対等の関係になれるのです。かつてアントニオ猪木ジャイアント馬場を挑発する発言を繰り返した時、ファンはさすが猪木と快哉を叫びつつも、やはり馬場は凄いんだと思いはしなかったでしょうか。

闘う選手達が、視聴率ではなく、その試合内容で評価されることが大切です。それを繰り返す地道な作業の末に、大きなうねりがやって来ると信じます。先日、ラスヴェガスで行われたマニー・パッキャオVSミゲール・コットのボクシング世界タイトルマッチを観ました。あの社会的評価と興奮。それは一朝一夕に手に入るものではありません。PRIDEの夢はもう忘れましょう。ブームは所詮ブームです。曙VSサップが瞬間視聴率で紅白歌合戦を超えたことは良い思い出にしてしまいましょう。

何よりも、選手の頑張りに期待します。