利他

イギリスのEU離脱が決まってからの報道は経済の話一色です。いや、もっと直截な言い方をしましょう、金の損得の話と。

この国民投票の結果をテレビのニュースで見たとき、わたしはもっと別のことを考えました。

今回の結果は、こう宣言したも同義です。国の利益を第一に考えることは国家として正しい態度だと。

お金の話です。これを企業に当てはめてみましょう。

会社としては商品を安く仕入れて高く売りたい。しかし、高い価格で売れる(買ってくれる)相手などいませんから、利益を得るためには仕入先から安く調達するのが手っ取り早い。その結果として仕入先が困窮しても知ったことではない。自分たちの利益を第一に考えるのは企業として当然の態度だから。

この考え方を国単位に当てはめたとき、そこに現れるのは地獄絵図でしょう。そして、わたしたちはそれを経験しているのです。だからこそ、世界中の国々は国際連合を作り、様々な国際機関をつくり、ヨーロッパはEUを作ったはずです。

これから、多くの国や地域で国民投票住民投票が行われるでしょう。国際社会がイギリスの態度を認めたのだから、自分たちの決定も受け入れるのが筋だろうという理屈とともに。

国の利益とは、その国民にとっては「自分が所属するコミュニティの利益」であり、それはつまり「そのコミュニティに所属する自分の利益」です。

そこから始まって、自分(だけ)の利益を追求するのは正しい態度だという価値観が生まれることを、わたしは懸念します。

他人がいなくては、人間は一瞬たりとも生きてはいけないのに。