朝三暮四(加筆訂正)

わたしの記憶が確かなら、消費税は、その全額を福祉にあてる目的税として導入されたはずです。それは、消費税の税率を上げる話が出るたび、「福祉の財源が足りないから」という決まり文句とともに語られることからも明らかです。

さて、主に高齢者を想定した社会福祉は、消費税のみによって賄われる性質のものでしょうか。言い換えれば、消費税以外の税金は社会福祉に使ってはいけないのでしょうか。

それは否でしょう。だって、消費税が導入される以前から、社会福祉という概念は存在し、そのための施策が行われていたのですから。

東日本大震災の復興予算が、震災と直接には関係ない分野にも流用されていることが報じられています。牽強付会という言葉も顔色を失うような言い訳とともに。

金は金。「何のため」なんてことは瑣末なこと。全体を見て判断すべき。そう言うなら、福祉の財源が足りないことを消費税の税率のアップとセットで扱うことはナンセンスです。

他の分野には触れず、「福祉のための財源が足りない。だから消費税の税率を上げざるを得ない」と言った場合、話はすんなり進みます。

有権者も、世の中は助け合いで成り立っており、情けはひとの為ならずなのだから負担増も止むを得ないと賛成することになる公算が大です。露骨に言うなら、その理由に反対することは人間性を疑われますから、表立って反対する人は出て来ません。

では、「防衛費が足りない」「国会議員の報酬に回す金が足りない」「これでは公務員の給料が出せない」「その他いろいろ、お金がかかることがある」から消費税の税率を上げたいと言ったらどうでしょうか。

これはもう喧々諤々。何一つまとまらないでしょう。

朝三暮四。順番が違うだけで数は同じなのに。

国を運営するに際して、その予算を組むとき、福祉の分野は優先順位として低いのです。もし高ければ、真っ先に必要な予算が確保され、それ以外の分野で足りない話が出るはずですから。

現実には、その逆です。

そのなかで上手く立ち回って利益を得ることが賢い生き方なら、わたしは愚か者になりたい。