負ける読書
伊丹十三の『日本世間噺大系』を読みました。多方面で活躍した人で、人によって捉え方が違うでしょうが、わたしにとっては映画監督です。抱くイメージはダンディズム。ずっと興味がありましたが、新刊書店はおろか古本屋で見かけることも少なく、手に取る機会がありませんでした。それが、昨年12月の東京小旅行で古本屋巡りをして出合ったのも何かの縁。そのときの空気を思い出しながらの読書でした。
日本語には話し言葉と書き言葉があります。世にあるインタビュー記事や対談も、後から手を加えられ結構を整えたものです。だから、あんなふうに理路整然として読みやすいのです。その語感の違いを意識したエッセイ、対談、座談、インタビュー(という体裁の諸作品)。読みにくいどころか、その肉感的な読み心地にドキドキさせられます。
この一冊の魅力を語るに際して、自分の力不足を痛感しています。何をどう言ったところで満足出来ず、それはつまり、わたしは著者に負けたということです。
その敗北感が嬉しい。
- 作者: 伊丹十三
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/06/26
- メディア: 文庫
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