追悼:ラッシャー木村

新日本プロレスにおいて、正規軍と維新軍の抗争がメインストリームとなった時、実は世代交代が行われていたのかもしれません。映画『男はつらいよ』が、渥美清の衰えとともに寅次郎一人の物語として作り上げることが困難になり、甥の満男の恋話の比重を大きくすることで作品を成立させていたように。

その軍団抗争が人気を博す中で、第三の存在として注目されることもなくなった“国際軍団”。メインイベントのタッグマッチにラッシャー木村アニマル浜口寺西勇の三人が乱入して試合をぶち壊した場面が忘れられません。

当時の私は、当然のこととして、国際軍団の狼藉に憤慨しました。しかし、決して後知恵で言うのではなく、観客の罵声を浴びながら無法な振る舞いをする三人に、理解できない悲哀を感じてもいました。憤慨しても、嫌うことはありませんでした。

「こんばんは事件」など一つのエピソードに過ぎません。全日本プロレス移籍後のマイクパフォーマンスを含めたユーモラスな言動だけで人気を博したのではありません。衆人環視の中で裸を晒すプロレスラーとして、多くのファンの脳裏に闘う姿を焼き付けた誇りを胸に目を閉じてくれたことを願わずにいられません。

棺を覆いて後定まる。彼もまた、偉大なプロレスラーでした。

謹んでご冥福をお祈りいたします。