合いの手

愛が溢れているね、愛が。

西加奈子の『円卓』は、作者が、自分が生み出した登場人物たちが大好きで愛おしくて仕方がない様子が行間から伝わってくる、読んで幸せな気持ちになれる作品です。

三人称多視点で語られる物語ですが、所謂“神の視点”と云われる俯瞰した描写ではありません。その人物の横に立って、あるいは人々の輪に入って、同じ目線で喋るような語り口です。

そうして地の文で入る作者の“合いの手”が楽しい。

大人は(自分が子供だったことも忘れて)単純化して理解したつもりになりますが、子供の世界も複雑です。いつの間にか周囲で成立している“常識”も、子供は納得しなければ受け入れません。その悪戦苦闘が愛おしい。

この作品の素晴らしいところは、子供を子供扱いしないところです。成長するって、ちょっと苦いけれど、それが甘さを引き立てもします。

吹き出したり、にやりとしたり、声に出して突っ込みを入れたり、他人がいる場所では読めません。ぜひ、お一人で。

円卓 (文春文庫)

円卓 (文春文庫)