覚悟の物語

上橋菜穂子の『獣の奏者 外伝 刹那』は本編で描かれなかった物語を収めた短編集です。

本編の中に配することなく、その完結後に外伝として一冊にまとめたことで、作品の奥行きが増し、読む者の胸に深い余韻を残します。

この物語の登場人物たちは、人生の岐路にあって決断します。悩み、葛藤し、そうせずにはいられない自分にたどり着きます。その対象に心と体のすべてでぶつかっていき、だからこそ後悔もありません。

そこにあるのは、己の全存在を賭けた“覚悟”のみ。

その姿に思わず応援したくなる。と同時に、(そう思うということは、実は)読者が応援されている。そんな作品です。