ふと立ち止まろう

価値観は時代と場所で千差万別、十人十色。それはわかっちゃいるけれど……。

内田樹は、『疲れすぎて眠れぬ夜のために』で、私たちが当たり前だと思っている価値観が実は脆弱であること、それに自分を委ねることの愚を論じています。

「それが常識」というのは思考停止と同義です。ならば、常識を問い直さなくてはいけません。その常識が常識たり得るかと。

私が見ているのとは違う世界(の相)を見せてくれる本も魅力的ですが、自分が感じていること、思っていても上手く表現できないでいることを言葉にしてくれる本もまた「読んで良かった」と思えるものです。

著者は武道に造詣が深く、その視点からの論には知的好奇心を刺激されました。

初めて読む作家で、手に取ったきっかけは、夏の文庫フェアの一冊として書店の平台に並んでいたのを目にしたことでした。

難しいことを難しく書くのは簡単で、それをわかりやすく書くのは才能であり、技術です。

夏の文庫フェアは夏休みの中学生や高校生に向けたもので、この本はその趣旨にぴったりです。この作家の入門書としても最適だと思われ、「角川文庫、なかなかやるな」といったところです。

疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫)

疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫)