般若心経

最も有名なお経のひとつ、般若心経。

般若心経について書かれた本を読んだことがありますが、それももう何年も前のこと。それとは違うアプローチの本を読んでみたいと思い、玄侑宗久の『現代語訳般若心経』を手に取りました。『禅的生活』の続きという側面もあります。

人生訓や解説書といったものではなく、著者があとがきで書いているように“現代語訳”という趣きです。もちろん、ただ現代の言葉に訳しただけでも一冊の本にはならず、そう訳する根拠や背景を観自在菩薩(観世音菩薩)がシャーリプトラ(舎利子)に語っている体裁です。というのも、そもそも、般若心経は、観自在菩薩が舎利子に向けて真理を説いている言葉だから当然といえば当然で、これが(舎利子を通して)読者へ語りかける形になっていて、親しみやすい本になっています。

般若心経といえば“色即是空”が有名です。この色と空の関係を、縁というキーワードで捉える視点は腑に落ちるものです。縁とは関連性です。

「すべてのものは“自性”を持たず、縁によってのみ現象する」というのは、頭では「そういうものか」と理解したつもりになることはできても、そう感得できるものではありません。

社会の在り様を人間の体に模して論じたものを読んだことがあります。視点とスケールを切り替えて見れば、それらも有機的な営みとして捉えることができるという内容です。

私は転職の経験があり、求職期間中、その営みに参加していない自分に忸怩たる思いを抱きました。

個人は他者と関係を結ぶことで個人たり得る。

般若心経が理解できたとは口が裂けても言えませんが、そのような個人的感慨をきっかけに、自分から挑む読書ができました。

現代語訳 般若心経 (ちくま新書 (615))

現代語訳 般若心経 (ちくま新書 (615))