『天皇と東大』その四

天皇と東大』を読んでいる最中、半藤一利の『昭和史』と『あの戦争と日本人』を読んでいて良かったと思いました。

半藤一利は、先の戦争の教訓として「熱狂するなかれ」と書いています。新聞は大衆を煽り、大衆は新聞を煽りました。その相乗効果が生み出した狂熱なくして、『天皇と東大』で描かれた物語はあり得ません。それを想像しながら『天皇と東大』を読めたことは僥倖でした。

それは現代に生きる私たちにも通じるものです。

自分で考えているつもりでも、実は誰かの言葉をつぎはぎしただけではないでしょうか。単なる受け売りを、自分の意見と錯覚してはいないでしょうか。

心からの言葉だけが聞く者の胸を打ちます。それは熱狂とは無縁です。その素晴らしい例が、第四巻の第六十五章で紹介されている南原繁総長の言葉です。

それを東日本大震災と重ねてしまい、読んでいて涙を止めることができませんでした。

立花隆が書いているように、私たちは、現在と地続きの、明治から大正を経て昭和に至る近現代史をあまりにも知りません。

もし、当ブログ記事をご覧の方が少しでも興味を持ってくれたなら、本当に嬉しいです。

天皇と東大〈4〉大日本帝国の死と再生 (文春文庫)

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