『天皇と東大』その二

東京帝国大学は、近代国家としての大日本帝国を運営する官僚を育成することを目的として存在しました。言ってみれば、日本の思想と制度の最先端であり、国家権力と密接に結びついています。

その東京帝国大学が、学問の自由及び大学の自治という問題で国家権力と対立するのは、教育という行為そのものが持つ本質が、人の持つべき道徳に根ざしたものだからです。

そのジレンマを、東京帝国大学は乗り越えることができませんでした。

東京帝国大学だけでなく、京都帝国大学でも多くの事件がありました。事件が起きること自体は、社会が混迷の度を深めていることの結果であり、避けられないことではありました。大学側は当初は国家権力の介入を拒絶して勝利を収めていたものの、徐々に旗色が悪くなり、最後には膝を屈することになりました。学問が破れたのです。

天皇と東大〈2〉激突する右翼と左翼 (文春文庫)

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