ホークス優勝に寄せて

「鷹は舞い降りた」との興奮とは裏腹に、フランチャイズを福岡に移した後、ホークスは低迷していました。理由は色々あったでしょうが、要するに弱かったのです。

それは“世界の王”を監督に迎えても変わりませんでした。その王貞治監督は、率いるチームが弱小であるにもかかわらず、「目標は優勝」と言い続けました。それは何故か。一つには、戦う以上は優勝を目指すのが当然という意識から。一つには、“優勝”という言葉を使うことで、万年最下位のチームの意識を変えたかったから。

「今は選手を育てている時期だから、結果は二の次。ファンの皆さん、それを理解して我慢してください」とは言えません。そうして負け続けていた時。

ホークスを応援する側のスタンドで、僅か数人によるものとはいえ、王監督を中傷する横断幕が掲げられ、シュプレヒコールが起きました。それが“批判”ではなく“中傷”だったことは、はっきり書いておきます。

この連中の行為にチーム愛はあったでしょうか。愛あるが故の厳しい態度だったのでしょうか。

否です。断じて否です。そこにあったのは、単なる自己愛に過ぎません。「厳しいことを言っているオレたちって格好良い」という自己満足でしかありません。あの行為、態度がチーム強化に役立ったと言ったら、それはホークスへの、さらには野球への冒涜です。

批判と否定は違います。

ホークスの秋山監督が胴上げで宙を舞いました。怪我で戦線を離脱する選手が相次ぎながら、それを補う選手が多数現れ、層の厚さ=チーム力の強さを印象付ける優勝です。

それは、チームの歴史の勝利でもあります。この優勝は、やってきたことが間違いではなかったことの証です。