ガンダム雑感①

ガンダムの生みの親といえば、誰もが富野由悠季を思い浮かべます。その富野由悠季は、アムロララァの出会いを描いた小説『密会』を書いた際、「将来、ガンダムの原作と呼ばれる作品」とコメントしています。

その数年後。『機動戦士ガンダム』が安彦良和によって漫画化され、タイトルに“THE ORIGIN”とつけられました。

人物の造詣も、設定の細部も異なる二つのオリジナル。二人の原作者。

この二人、というよりも、二つの才能がぶつかり合って『機動戦士ガンダム』が傑作になったことは周知の事実です。それは、安彦良和がキャラクターデザインに止まり、前作のようにアニメーションディレクターとして製作に携わらなかった続編の『機動戦士Ζガンダム』の完成度の低さからも窺い知ることができます。

安彦良和は『機動戦士ガンダム』と距離を置こうとしてきました。そこには、自身の仕事に対する誇りと矜持が見えます。『機動戦士ガンダム』を漫画化することになった時、大きな葛藤があったであろうことは想像に難くありません。

そこには、消費という化け物を相手にする企業の論理が見え隠れします。その作品は、出版社のみに止まらず、その商品展開に関わる多くの企業に利益をもたらし、そこで働く人々に収入を与えることになります。漫画家個人の想いなど、偏に風の前の塵に同じ。

アニメでは描かれなかった数多くのエピソードを配置し、より物語性が増した『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』。しかし、私は、富野由悠季の空気が希薄な漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』に違和感を覚えました。「ガンダムであってガンダムに非ず」という感想を持ちました。読み応えはあります。面白いです。でも、物足りないのです。

富野由悠季の『機動戦士Ζガンダム』。

安彦良和の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』。

仲が悪い、でも他人になれない兄弟のようです。