暴力

大藪春彦の対談集『男たちよ 闘いの荒野に死ね』(角川文庫・絶版)に、五木寛之との間で以下のようなやり取りがあります。

五木「暴力というものに対して、いまでも一概に否定できないわけです。つまり、暴力は(権力や社会的地位、金といった、身を守る術を)持たざるものの最後の武器じゃないかと」

大藪「まったく同感です」

これは、筆舌に尽くし難い引き揚げ体験と、その後の差別と暴力に関連しての発言です。

ここで二人の言う暴力は、自分よりも強い者に対するものです。理不尽な圧力に抗するものです。

私は、暴力を肯定も否定もしません。絶えず、その狭間で悩み続けることを選びます。

そして、自分より弱い他者を屈服させる手段としての暴力は、断固否定します。言うまでもなく、大袈裟でなく、その究極の形が、戦争です。