制空権

月の球のイメージで思い出すのが、K-1でのアーネスト・ホーストvsフランシスコ・フィリオの初対決の試合です。

キックボクサーとは異なる、後屈立ちのフィリオ。相手の攻撃を迎え撃っての一撃を狙います。

(おそらく)初めて空手家と向かい合ったホーストは、間合いの違いを察し、脳内のコンピュータをフル稼働させて距離を掴もうとします。

“静”に見えて、実は“動”。

互いに手数が少ないながら、二人が凄まじい分量の拳と蹴りのやり取りをシミュレーションしている緊張感が東京ドームを満たし、観客は固唾を飲んで見入りました。

それを“間合い地獄”“制空権の争い”と表現したのは石井和義館長(当時)だったでしょうか。

互いの“月の球”が触れそうで触れない、僅かに触れた次の瞬間には弾き合う。そんな試合でした。