船戸与一は、ハードボイルドを「ハードボイルド小説とは帝国主義がその本性を隠蔽しえない状況下で生まれた小説形式である。したがって、その作品は作者の思想が右であれ、左であれ、帝国主義のある断面を不可避的に描いてしまう。優れたハードボイルド小説とは帝国主義の断面を完膚なきまでに切り裂いてみせた作品を言うのである。」と定義します。(『ミステリーの仕掛け』収録「ハードボイルド試論 序の序−帝国主義下の小説形式について」より)

また、大藪春彦の『復讐の弾道』(光文社文庫)の解説に、「秀(すぐ)れたハードボイルドはときとしてすさまじい予見性を持つ。」と書いています。

山際淳司が云うように、ふと立ち止まった時、大友克洋の『AKIRA』の、大佐の台詞を思い出します。

「止めんか。刮目して大局を見るんだ。堕落した資本家や政治家に踊らされてはならん。まだ、わからんのか。これ以上の争いは無益だ」