プロレスに物申す

新日本プロレスに所属するプロレスラー、真壁刀義が頚椎損傷のために休場し、復帰時期も未定とのことです。

闘う二人の選手の協力作業のもとに、互いに危険な技を掛け合う現在のプロレス。そこに闘いの緊張感はなく、あるのは刹那的な刺激だけ。

より危険な技を目にすることで恍惚となり、それをカウント2.9で返す様に興奮する。何が楽しいの?

プロレス人気の衰退の原因を、総合格闘技の台頭に求める言説があります。プロレスは“本当の”闘いではないと。

それはあまりに稚拙な論です。結果論を承知で言えば、プロレスラーたちは逃げたのです。自分たちがやっていることに胸を張れず、見えないふりを決め込んだのです。

そして、プロレスの凄みを表現するために、安易な手法を選択しました。常軌を逸した危険な技。それを、歯を食いしばって耐える、気迫溢れる表情。表層的な飾りつけに苦心して、肝心の闘いは二の次、三の次。

そうして、プロレスラーは「わかってくれる人だけわかってくれれば良い」と観客に甘え、観客は「プロレスラーの超人的な肉体は凄いんだ」とプロレスラーに甘え、その結果が三沢光晴の死でした。

今回の真壁の件は、幸運にも死に至るものではありませんでしたが、後遺症が無いと誰が断言できるでしょうか?

昭和の昔に回帰しろ、と言うつもりはありません。ただ、もっと真摯に自分たちの職業に向き合ってほしい。観客が満足しなければ自分たちの存在意義が疑われるなどと臆病にならないでほしい。

今回の真壁以外にも、重いダメージを負っているプロレスラーがたくさんいます。リング禍はもうたくさんです。