美濃輪育久

石井慧との試合において、ミノワマンの戦い振りは、自ら動いて主導権を握ろうとせず、相手の一瞬の隙を狙うものに止まりました。

試合の数日前に突然決まったカードでした。ミノワマンは、戦う相手について研究する余地を与えられることなく、試合に臨むことになりました。

もしも、ミノワマンが体格差をものともせずに玉砕覚悟で挑んでいったら、一時的に喝采を浴びたかもしれませんが、実は、それは卑怯な振る舞いだと、私は考えます。彼は、そうしませんでした。

ミノワマンは、白紙の状態でリングに上がることを受け入れ、その中で誠実に勝利を目指しました。一方で、観客に喜ばれる試合をしたいと願いながら、与えられた情況がそれを許しませんでした。試合中、ずっと苦しみに耐えているかのような表情だったことが印象に残っています。

ビジョンを持ってリングに上がることができなかったミノワマンの、プロレスラーとして自分を表現できなかった無念さが感じられた試合でした。