『MASTERキートン』1

漫画『MASTERキートン』。各種ランキングでも上位に名を連ねる傑作です。

その第四巻に「穏やかな死」という話が収録されています。現在、手元にないのですが、おおよそ以下のような内容です。

爆弾作りを専門とするIRAのテロリスト。最後の爆弾を作って引退した彼は、あてのない旅に出て、ある田舎を通りかかり、バス停でのんびりと日向ぼっこをする老人と出会います。

その老人は“ひ孫”もいる老齢です。男は老人に尋ねます。「じいさん。そんなに長生きして、いつが一番幸せだった?」

老人は迷うことなく気負うことなく答えます。「今だな」と。

翌日、同じバス停に足を運ぶと、老人の姿が見えません。そして、通りかかった教会で行われている葬儀。棺の中に横たわっているのは、あの老人でした。

男は、かつて自分が作った爆弾を解体した唯一の男、この漫画の主人公のキートンに協力を求め、自分が作った最後の爆弾を解体しようとします。

何故か。

男には、やはりIRAの爆弾作りの専門家だった祖父がいました。その祖父はイギリス軍(主にSAS)との戦争で亡くなり、英雄として葬られました。男は、子供ながらに「これが男としての価値ある生き方であり、死に方だ」と肝に銘じ、その想いを胸に生きてきました。

物語は男の回想場面、老人の死に顔を眺めているところで終わります。「人は天寿を全うすべきだ。自分も、あの老人のように穏やかな顔で死にたい」と。

既に親である方なら頷いていただけるでしょう。これから親になる方は、いつかきっとわかってくれるでしょう。

そのコがいくつの時、一番可愛かったかと訊かれたら、私は迷わず答えます。「今です」と。

二歳くらいが可愛い盛り? そんなことはありません。その時その時、その可愛さはかけがえのないもの。比較して優劣をつけることなどできません。

今日は9月4日。誕生日、おめでとう。きみの存在は、かけがえのないプレゼントです。きみがいることに、ありがとう。