ビールと冷たい水

「けれん」

①演劇で、軽業的な手法を用いた演出。大道具・小道具の仕掛け物や、宙乗り・早替りなど。

②他人の気を引いたり、自分を正当化したりするための、おおげさで不自然な言動。ごまかし。はったり。(大辞林

人は時に、虚飾を排して原点回帰、リセットしたい衝動にかられます。プロレスにおいて、旧と新生、二つのUWFはその願望に合致しました。ビールに酔った時に飲む冷たい水のように清冽でした。

そのUWFがまだギリギリ纏っていた“けれん”を剥ぎ取ろうと試みたのが、船木誠勝鈴木みのるの、レガースを外し、蹴りを含む打撃を排したこの試合でした。

「どっちも頑張れっ!」

この声援の後、ちょっと笑いが起きます。しかし、それは嘲笑や苦笑ではなく、「自分が感じていることを言葉にしてくれた」という喜びが込められたものです。事実、この言葉を承けて、闘う二人とともに観客もまた試合と一体化していきます。