物語性

k-1が世に出た時、それは突然現れた新しい刺激でした。それ以前の正道会館の活動が下地になっていても、それは多くの一般視聴者や観客には関係ありませんでした。

K-1は年一回開催されるグランプリ、K-1GPを核として、その前後に各大会を配する手法を取ることで、リング上での闘いに前後の繋がりを持たせました。その最たる例で、私がそのコンセプトに唸ったのが、GPの次に開催された“K-1 revenge”でした。

本番のGPで奮闘しながら僅かな差で敗れた選手に、もう一度機会を与える。観客の中には、GPの勝敗を絶対的な優劣と見ず、「もう一回やったら結果が覆ることもあり得る」と考える人たちも多く存在し、その願望を叶えるものでした。

GPに出場するまでの闘い、GP本戦での激闘という流れが、ここで個々の選手の個々の相手に対する復讐戦という局面を迎えて、その“物語性”は最高潮に達しました。

試合の勝敗においては、この“復讐”が成功する確率が低かったのは事実です。しかし、単なる勝った負けたではない興奮を、観る者にもたらしました。

美味い料理を作ることだけで満足してはダメです。料理は美味くて当然なのです。その料理の魅力を引き出す、食器の選択から盛り付けも大切です。