残心
“残心”
武道における心構え。一つの動作が終わってもなお緊張を解かないこと。剣道では打ち込んだあとの相手の反撃に備える心の構え、弓道では矢を射たあとその到達点を見極める心の構えをいう。(大辞林)
ボクシングの基本は、左ジャブから右ストレートの、所謂“ワン・ツー”です。
1)右足でリングを蹴り、左足で踏み込む。蹴った右足も左足を追うように前方に移動し、両足の幅を一定に保つ=ステップイン。
2)その勢いを一瞬溜め、次の瞬間に左ジャブ。
3)右足の親指の付け根に力を入れ、そこを中心にリングを蹴って(踏みにじって)、右斜めを向いていた右足を正面に向ける。
4)その下半身の動きのままに、腰を回転させる。
5)同時に、ジャブで前に出していた左手を思い切り手元に引く。
6)4)と5)の動きが連動して、腰の回転が肩の回転に繋がる。
7)拳を繰り出すのは最後。一拍遅れて打ち出されるイメージ。
8)相手にヒット。
なのですが、問題は当たった後。拳を、繰り出した動きのままに“スピーディーに”元の位置(唇のすぐ右横)に戻す動作が必要になります。当たった後の動きなど関係ないと思われる方もいるかもしれませんが、不思議なもので、それがパンチの“切れ”を生みます。そこまで含めての“ワン・ツー”なのです。
もちろん、素早い引き手の動きは、相手の攻撃に対する防御という点からも重要です。
私は小学生の六年間、空手を習っていて、最終的には初段に合格して黒帯を締めました。その経験があっての理解だと思いますが、私はワン・ツーでの右手の動きに、単なる攻撃と防御以上のものを感じます。
そして、残心の心構えは、自らの技に対する慢心を戒め、相手を尊重することでもあります。