宿題

チーズはどこへ消えた?

迷路の中のネズミ。手元には餌のチーズがありますが、無限ではなく、食べ尽くしてしまえば飢えるのは間違いありません。そこでネズミは“ポジティブに”新たな餌を求めて迷路の通路に一歩踏み出します。

この単純なストーリーは、“変化を恐れずポジティブに前に進むことで事態は好転する”ということを謳っています。それはそのまま、読者の私生活上の問題、仕事や恋愛、人間関係、その他あらゆることに置き換えが可能です。

読んだのは、もう十年くらい前。胡散臭い。それが私の感想でした。読み終えた後、本棚に並べることもなく古本屋に直行しました。

先日書いた白洲次郎に“プリンシプル”という言葉があったように、このブログとの相互リンクを快諾してくださった「別冊・プロレス昭和異人伝」の管理人のshingol氏は“能動性”という言葉を自身の行動規範にされています。

チーズはどこへ消えた?』の“ポジティブ”と、shingol氏の唱える“能動性”は似て非なるものと、私は考えます。

プロレスの神様といわれた故カール・ゴッチは、大略次のように言いました。(相変わらず記憶を元に書いていますので、正確ではありませんが、大きく間違ってはいないと思います)

試合の中で、選手はその瞬間その瞬間に最も適した動きをすることに専念すれば良い。その結果としての勝敗は神のものである。

チーズはどこへ消えた?』の説く“ポジティブ”は、このカール・ゴッチの言葉とは相容れません。それは何故か。事態が好転するという結果を欲しているからです。ポジティブな姿勢は“手段”なのです。

shingol氏の言う“能動性”も競技に特化したものではなく、個々人がその生活の中で発揮することが大切ですが、それは結果としての見返りを求めてのことではありません。それ自体が生きる姿勢、“生き方”なのです。

これは誰かが言葉で定義する類のものではありません。おそらく、shingol氏自身も含めて。

今回書いた内容は、現時点での私のスタンスを確認したものに過ぎません。これは時々刻々、変化していくべきことだと認識しています。shingol氏は私に厳しく難しい、「これが正解」という答えにたどり着けない宿題を与えてくれました。感謝多謝。