朝青龍引退に想う

以前、刑事裁判において、被告に対して「むかつくんですよね」と声を荒げた裁判員について書きました。今回の騒動で、嬉々として朝青龍を叩く人たちを見て、同様の印象を持ちました。

彼らは人一人を裁いて、その人生を左右する権利を神から与えられたとでも思っているのでしょうか。正義は我にあり、と言わんばかりに得々と朝青龍を非難する顔は厚顔無恥の見本のようです。

自分の発言がどのような結果をもたらすのか? その想像力も無ければ、そのことに対する慄きも無い。いや、そもそも、朝青龍のことを真剣に考えている人などいなかったのでしょう。残念ながら、師匠の高砂親方も含めて。

内館牧子朝青龍に対して批判的な言葉を繰り返すことで知られています。彼女は一度でも、マスコミを通すことなく、朝青龍と余人を交えずさしで、相撲に対する、或いは横綱朝青龍に対する想いを語りかけたことがあったでしょうか? 私は寡聞にして知りません。(もし実際にそうしていたらごめんなさい)彼女は文筆を生業としています。その彼女の言葉が朝青龍に届かなかった事実は、作家としての敗北を如実に表しています。彼女は負けたのです。

朝青龍の幼稚な言動はもちろん批判されて当然です。しかし、その批判の言葉の数々も、合わせ鏡の如くまた幼稚でした。

国技やら横綱やら品格やら騒ぐ割りには、貧しく荒涼とした風景でした。