あれから何年

あれから何年経ったのでしょう。あの忌まわしい小学校襲撃事件から。

その時私がテレビ画面に見たのは、おぞましい光景でした。怒りという感情は通常は熱を持つものです。しかしその時私が感じた怒りは、冷たく冷えたものでした。

年齢にかかわりなく、それでも特に子どもにとって学校は、友達や先生といった限られた近しい人たちだけがいる“自分たち”だけの空間です。そこに見知らぬ男が乱入してきました。小さな子どもにとって、面識の無い大人の男はそれだけで威圧感を感じる存在です。それなのに、その男は突然現れ、しかも手に刃物を持って暴れるようにたくさんの友達を傷つけてまわりました。

それはどんな地獄だったでしょう。今ここで想像して描写することすら躊躇われます。

比喩ではなく命からがら逃げ出した彼ら彼女らは、逃げ出した先でその地獄をもう一度体験することになりました。

大勢の見知らぬ大人に囲まれ、カメラのフラッシュを浴びせられ、テレビカメラを向けられ、刃物の替わりにマイクを突きつけられ、友達が切りつけられ殺された様子をその小さな口で語らせられる。

これは非道です。もっともらしい顔つきで「心のケア」と言われても、それは何かの冗談かと嗤うことすらできませんでした。

それ以来、私は事件や出来事のライブ映像を見たいと思った時を除いて、基本的にテレビのニュース番組は見なくなりました。世の中の出来事を知るために新聞は読みますが、その記事を鵜呑みにして頷くこともなくなりました。

権力は腐敗する。第四の権力もその例外ではないということを実感とともに思い知った瞬間でした。