2014-01-13から1日間の記事一覧

『南冥の雫』

『南冥の雫』では、満州国は存在感がありません。描かれる舞台は東南アジアで、ある種の空白地帯の様相を呈しています。その存在感の無さ、影響力の無さは、満州国が砂上の楼閣であるということを物語っているように思えます。どのような気高い理想も、それ…

教養小説

船戸与一の“満州国演義”シリーズは、小説らしくない小説です。通常、作品の中で起きた出来事は、物語の進行上、何かしら意味があります。こういうことがあって、その結果としてこういうことが起きたといった具合に。このシリーズには、その段取りがありませ…

硬派の宿命

船戸与一の“満州国演義”シリーズの第八巻『南冥の雫』には、とても怖い言葉が引用されています。「王よりも王派」権力者の関心を買おうとした者たちが、その権力者よりも過激な態度を取ることを指しています。これが歪であることは論を俟ちません。しかも、…