2009-07-13から1日間の記事一覧

私的・船戸与一論 その七

『虹の谷の五月』で直木賞を受賞した際に読売新聞に寄せた文章を、一部抜粋。「これまで多くの辺境での開放闘争をテーマとして書いて来た。しかし、冷戦構造崩壊を機にみずからが造りだす作品世界に奇妙な齟齬感を抱きはじめたのは否めない。かつて、辺境で…

私的・船戸与一論 その六

船戸与一の、己の創作についての言葉。「叙事の積み重ねが叙情を凌ぐ」大辞林によると、“叙事” 事件や事実をありのままに述べること。“叙事詩” 神話・伝記・英雄の功績などを物語る長大な韻文。“叙事的演劇” 観客の感性に訴えようとする演劇に対して、理性に…

私的・船戸与一論 その五

大藪春彦といえば言わずと知れたハードボイルドの先駆者にして巨星として、その死後も輝きを失っていない。その大藪の『復讐の弾道』(光文社文庫)の解説を船戸与一が書いている。「大藪春彦は主人公たちに、たとえば伊達邦彦にかならず次のような性格を附…