『七人の侍』③

「今回も負け戦だったな。勝ったのは百姓たちだ」とは、物語の最後、勘兵衛の締めの台詞です。それは麗らかな日差しの下、田植えの場面です。

賑やかなお囃子、新たな季節への喜びに満ちた笑顔。それを離れた場所から眺める勘兵衛たちの横を、苗を担いだ女たちが通り過ぎます。そして、そこには、若侍の勝四郎と情を交わした(百姓の娘の)志乃の姿が。

若い二人は非常事態の中で出会い、恋に落ちます。そこで主導権を握るのは、勝四郎ではなく志乃です。「侍の家に生まれていれば、あんたと一緒になれたのに」と甘い言葉を囁いたり、逢瀬を重ねる中で身をまかせようとし、躊躇う勝四郎を「侍のくせに弱虫」と責めたり。

そして、最終決戦の前夜、志乃が無言のままに勝四郎を無人の小屋に誘い、二人は結ばれます。

それを知った志乃の父親は「一人娘を傷ものにされた」と激怒しますが、観ている側としては逆、志乃が勝四郎をものにしたとしか思えません。

その志乃が、勝四郎とすれ違うとき、ほんのちょっと足を止め、何か言いたそうな彼に微笑んで、すぐに走り去って行きます。未練を抱え、数歩追いかけて立ちすくむ勝四郎を後に置いて。

負け戦であることをあらためて教えてくれる場面です。

次に『七人の侍』を観たら、どんな感想を抱くのでしょう。そう思わせてくれる、本当に観て良かった素晴らしい作品です。