『狼眼殺手』③

月村了衛は、“機龍警察”シリーズの特筆すべき点は、龍機兵(ドラグーン)という操縦者が乗り込む機械兵器の存在ではなく、警視庁が外部の人間を契約して雇っているところにあると言います。

何故、操縦者を警察官から選ばず、外部から連れてきたのか。

それは、龍機兵の秘密を密接につながっています。

その秘密を巡るシリーズ最新作『狼眼殺手』において、龍機兵の活劇はありません。

しかし、作品の焦点が三人の搭乗者と龍機兵の関係にあるのなら、その三人の物語こそが“機龍警察”シリーズの本体であるといえるでしょう。

そこに、もう一人。警視庁特捜部の部長、沖津旬一郎がいます。

『狼眼殺手』は、これまでのシリーズ作品と比較して、沖津旬一郎の出番が多く、彼が積極的に物語の展開を牽引します。それでも、まだまだ描かれていない部分が多く、神秘的な雰囲気を漂わせています。

この沖津旬一郎がいるからこそ、龍機兵の三人の搭乗者は自らの人生を生きることが出来ます。

先にポリティカル・フィクションとして優れている旨を書きましたが、それも魅力的な登場人物がいてこそ。

今後、物語がどうなるのかと同時に、彼ら彼女らに限らず、捜査班の刑事たちも含めた登場人物たちがどうなるのか。そういう興奮を感じさせるシリーズです。