東京小旅行③

第二部は「新宿御苑大沢在昌の『毒猿 新宿鮫Ⅱ』を読むこと」です。

『毒猿』の最後、物語のクライマックスの舞台が新宿御苑、その中の「台湾閣」です。案内のチラシには「旧御涼亭」とあり、現在は呼び名が違うのかもしれませんが、わたしの中では台湾閣です。

そのチラシを手に通路を進みます。ここは真っすぐ、次の交差点で右といった具合です。そして、ありました、台湾閣。さあ、二、三十メートル離れたところにあるベンチに座って読書です。

ああ、この目の前の池に毒猿は隠れていたんだな、今わたしが通ってきた通路を鮫島は歩いたんだなと、視線は目の前の風景と手元の本の間を行ったり来たり。こんな読書、したことない。

そして、鮫島が台湾閣へ乗り込む場面に。もう居ても立っても居られません。本を手に建物へ。当たり前ですが、書いてあるとおりの建物です。描写されている階段を上って中に入ります。振り返って入り口を見て「ああ、鮫島はそこに身を隠したんだな」、池に面した手すりを見て「ここから毒猿は上がってきたんだな」、建物の真ん中に立って「今わたしが立っているまさにここで、鮫島と毒猿は対峙したんだな」と異様な興奮状態になりました。

新宿御苑にはいくつかの門がありますが、歩くルートは変えたものの、入場した「新宿門」から出ました。というのも、鮫島はそこにパトカーを乗りつけ、車のボンネットから門を乗り越えたからです。振り返ってその場面を想像してから、次なる目的に向かいました。