こんどは素直に

個人的な夏の文庫フェア。

テーマはずばり“青春”です。

人間の一生は青春・朱夏・白秋・玄冬の四つに分けられます。確かに、振り返って青春の時期が過去のものになったことを実感するときがあります。しかし、心の奥底にしまってあるだけで、消えてなくなったわけではない想いもあるはずです。

阿佐田哲也の『麻雀放浪記(青春編)』は問答無用のど真ん中。まだ何者でもない若者が、まだ何事でもない戦後の混乱期に戦う物語。

金城一紀の『フライ・ダディ・フライ』はさえないオジサンのひと夏の奮闘記。魅力的な高校生たちとともに“成長する”ビルドゥングスロマンです。

フライ,ダディ,フライ (角川文庫)

フライ,ダディ,フライ (角川文庫)

船戸与一の『虹の谷の五月』は著者には珍しい少年を主人公にした作品です。生きる力とは命そのものの持つ力。読後も爽やかで、夏にぴったりの物語です。

虹の谷の五月(上) (集英社文庫)

虹の谷の五月(上) (集英社文庫)

虹の谷の五月(下) (集英社文庫)

虹の谷の五月(下) (集英社文庫)

誉田哲也の『レイジ』は音楽小説の白眉。自尊心と自意識過剰。それが音楽の魔力に絡めとられて、読者もドキドキ、先が気になってページを繰る手が止まりません。

レイジ (文春文庫)

レイジ (文春文庫)

ロバート・マキャモンの『少年時代』は親と子の物語。母親と娘の結びつきは強く、父親の入り込む隙はないともいいますが、父親と息子もまた然り。

少年時代〈上〉 (文春文庫)

少年時代〈上〉 (文春文庫)

少年時代〈下〉 (文春文庫)

少年時代〈下〉 (文春文庫)