まずは知ろう

わたしたちは、東南アジアやASEANという言葉で一括りにしてしまいますが、そこにはいくつもの国、民族、宗教、そして人々がいます。しかし、その人たちは互いの違いを違いと認めつつまとまろうとしています。著者は、それを「多様性の中の統一」として、本書のキーワードに挙げています。

東南アジアの、土着国家の時代から、欧米列強による植民地支配(残念ながら、そこには日本も名を連ねます)を経て、そこから独立して現在に至る道程は、わたしたちが世界史の授業で習う欧米の物語に負けずとも劣らない歴史です。

国民の不満の源は貧しさにあって、それを解消するためには経済の発展が必要であり、その実現のためには国が政治的、社会的に安定していなければならないとして、国民の権利や自由が制限されるのもやむを得ないという理屈と、その結果として経済の成長にともなって中間層が形成され、民主主義が求められるという展開に、歴史の皮肉を見ずにはいられません。

どの国にも問題が山積しています。それでも東南アジアという域内で“ゆるやかに”連帯して前に進んで行こうという逞しさには学ぶべき点が多々あると思います。

入門 東南アジア近現代史 (講談社現代新書)

入門 東南アジア近現代史 (講談社現代新書)