物語る

このゴールデンウィーク横溝正史週間にしようと、二冊立て続けに読みました。

謎解きを主眼とするミステリーの醍醐味は終盤での読者を驚かせる謎解きで、物語のすべてはそこに収斂します。そこに至る作中の出来事はすべて最後の驚きのためにあるのであり、そのミスリードに紙幅は費やされるわけです。

だからといって、物語の中で起きる事件が最後に驚くための条件でしかなかったら、それは小説ではないでしょう。

夢枕獏は、最初期のエッセイで自分の小説の目指す形を「夜、たき火を囲んでの物語り」と書いています。

横溝正史の作品が長く広く愛されるのは、その物語る調子と内容が見事に合致しているからだと思います。

内容とともに文体が作品を作ります。

わたしが贅言を費やすまでもありませんので、特に感想は書きません。ただ一言、堪能しました。

夜歩く (角川文庫)

夜歩く (角川文庫)